放送回 | No.0044(0025-B) |
放送日 | 1976年03月27日(昭和51年03月27日) |
出典 | (表記なし) |
クレジット | 演出:光延博愛 文芸:沖島勲 美術:内田好之(青木稔) 作画:高木三枝子 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、兵六(ひょうろく)というお人好しの男に美しい気立てのいい妻がいて、二人は仲良く幸せに暮らしておりました。
兵六は妻があまりにも美しいので、その顔にずっと見とれてばかり。結婚してからというもの畑仕事もまともにできないありさまでした。それに困った妻は、自分の絵を兵六にもたせて仕事に行かせることにしました。妻の絵姿をもらった兵六は、それを板に貼り付けて絵を見ながらようやく畑仕事をしっかりすることができるようになりました。
ところがある時、その大事な絵姿が風に煽られて飛んでいってしまったのです。兵六は追いかけましたが、取り返すことはできませんでした。その絵は、城に飛ばされていました。絵姿を見た殿様はひと目で彼女を気に入り、家来にこの女性を探して連れてくるように言いつけました。自分の妻にするためです。
そうして見つかった兵六のお嫁さんは、家来に連れて行かれることになってしまいました。お嫁さんは「桃の種」を兵六に渡して、「三年経ったら実がなります。必ずお城に売りに来てください」と泣きながら言い残して連れて行かれました。兵六はしょんぼりとしていましたが、妻の言い残したとおり桃の種を植えて三年間育て上げ、桃をお城に売りに行くことにしました。
一方その頃、お城では無理やり結婚したはいいが、妻がこの三年間全く笑わないので殿様は困っていました。そこへ聞こえてきた兵六の桃売りの声。兵六の声を聞いた妻は嬉しそうに笑い出しました。それを見た殿様は嬉しくなって兵六を城にあげ、「もう一度桃を売ってみせよ」と所望しました。妻は兵六の姿を見てまた嬉しそうに笑い、殿様はもう嬉しくて嬉しくて今度は自分が妻を笑わそうと、兵六と着物を交換しようと言い出しました。
桃売りの姿になった殿様は、妻が笑ってくれるのを見ながらはしゃぐうちに、そのままの格好で城の外まで出てしまいました。そうとは知らない門番は、桃売りが帰ったのだと思って門を閉めてしまい、再び中に入ろうとする殿様を「怪しい桃売りめが」と外に追い出してしまいました。こうして、兵六は美しい妻とともに殿様として、幸せに暮らしたということです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-6-16 14:45 )