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粟の長者(あわのちょうじゃ)

放送回No.0414(0259-B)
放送日1980年10月18日(昭和55年10月18日)
クレジット演出:小林三男 文芸:沖島勲 美術:末永光代 作画:三善和彦

あらすじ

昔、伊豆の三浜(みはま)というところに、働き者の貧しい男がいた。男がいくら働いても、荒れ果てた畑からは、食えるものはなにもとれなかった。そんなある夜、男は不思議な夢を見た。広い荒れ地に白い馬が現れ、金に輝く粟の穂を食べている夢だった。目を覚ました男は、夢に出てきた場所が、蛇野が原(あざのがはら)にそっくりなことに気がついた。

そこで次の日、蛇野が原へ行ってみると、なんとそこには、夢でみた白い馬が、金の粟の穂を口にくわえていたのだった。「ああ、ありがたや。きっとここを耕せという神様のおぼしめに違いない。」男は夢中で、蛇野が原一帯の荒れ地を耕し、白い馬がくわえていた金の粟の穂を植えまくった。そうして秋になると、粟の穂は見事に実り、蛇野が原は、金に輝く粟で目もくらむばかりの大豊作となった。こうして男は、たちまち「粟の長者」と呼ばれる大金持ちになった。男は、有り余る粟を家の屋根から壁まであらゆる所に塗りこみ、ピカピカの家を建てた。

それから何年かたったある年のこと。村は大変な飢饉にみまわれ、食べ物がなくなった村人たちは、粟の長者の家に、粟を恵んでくれとやってきた。ところが、贅沢に慣れ、飢えの苦しみを忘れた粟の長者は、「この粟はわしのものじゃ。一粒もやらんわい。」と、村人たちを追い返してしまった。それからのこと、飢えに耐えかねた村人たちが、長者の寝ているすきに、長者の家の壁に塗りこめてあった粟をむしとりはじめた。元々はこの長者も貧しい百姓だったのに、すっかり欲深になっていたのだろう。長者は壁の粟を取られまいと、壁中に何重にも厚く泥をぬってしまった。これには村人たちも困ってしまい、なくなく村を去っていった。

その夜、長者がぐっすりと眠りについた頃。カリカリという音が、蔵の方から聞こえてきた。目を覚ました長者は、蔵へ行ってみてびっくりした。蔵の中で、何千、何万というネズミがカリカリと粟を食べていたのだ。そうして不思議なことに、ネズミたちは蔵の粟を食べ尽くすと、一つのかたまりとなって外へ飛び出し、やがて白い馬に姿を変え、空へとのぼっていってしまった。

「あ、あの馬は、昔わしが夢で見た神様の馬!」長者はやっと思い出した。貧しくて、一日中ひもじい思いをしていた時のことを。「わしは神様によって長者にしてもろうたのに、貧しい人に粟の一粒も恵んでやれんかった。それで神様が怒りなさったんじゃ。神様、許してくださいませえ。」それからというもの、男は元の百姓に戻り、また畑を耕しはじめたそうだ。

(投稿者: 十畳 投稿日時 2011-8-2 14:25 )


参考URL(1):http://blog.livedoor.jp/izu_onsen/tag/%E8%9B%87%E9%87%8E%E5%A4%A9%E7%A5%9E
地図:賀茂郡南伊豆町天神原(長者ケ原付近)

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