ある村に太郎兵衛(たろべえ)という怠け者の若者が住んでいた。
ある夜、太郎兵衛が囲炉裏端で寝ていると、どこからか風が吹き込み、囲炉裏の火を消してしまった。そして家の庭先から不気味な声がするのだ。その声は、「た~ろべえは、タンポコタン」と言い続ける。
太郎兵衛は立ち上がろうとするも、どういう訳か足が立たない。太郎兵衛は恐ろしくなり、布団の中にもぐり込み、朝までガタガタ震えていた。
翌朝、太郎兵衛は村一番の物知りと言われる林右衛門(りんえもん)の家に相談しに行った。林右衛門は、「それは魔性の者じゃ。若い者を数人集めて口争いをすればいい」と言う。相手が「た~ろべえは、タンポコタン」と言ってきたら、「そう言う者こそ、タンポコタン」と言い返せばいいと言う訳だ。
そこでその夜、太郎兵衛は村の腕っぷしの強い若者四人を家に呼んで、化け物が現れるのを待った。やがて夜も更けた頃、庭先から「た~ろべえは、タンポコタン」と声が聞こえてきた。太郎兵衛たちは1人ずつ交代して、「そう言う者こそ、タンポコタン」と言い返す。
何しろこちらは五人。こんなやり取りをしていると、相手の声はだんだん弱々しくなってきた。そしてついに、「ドサッ!」と何かが庭先で倒れる音がした。「今だっ!!」皆で外へ出てみると、声の主はたぬきだった。たぬきは息も絶え絶えになりながら、山へと逃げ帰っていく。
翌朝、この事を聞いた林右衛門は、「たぬきは人の魂を取って長生きするのじゃ。特にお前のような怠け者が大好きなんじゃよ。お前たちは魔性に勝ったのだから長生きする」と笑いながら言う。
この事があってから、太郎兵衛は心を入れ替え、真面目に働くようになったそうな。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 土屋北彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 大分の民話 第一集(日本の民話49),土屋北彦,未来社,1972年08月15日,原題「タンポコタン」,採録地「大野郡三重町」,話者「伏野武男」 |
場所について | 高寺集落(地図は適当) |
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