茂衛門と八右衛門という二人の六部が、国のあちこちを歩きまわっていた。途中高いえのきの木の下で、一休みしていると、茂衛門の鼻の穴から一匹の蜂が、飛び出て来た。するとその蜂は、えのきのてっぺんより高く舞い上がり、下の方を透かして見ている様子だった。
それを見ていた八右衛門は、茂衛門を起こした。目を覚ました茂衛門は、「夢の中で、金を掘り出し大金持ちになるところだった。」と言った。八右衛門は、二ヤッとして「これからは別々に旅をして、いつの日かお伊勢さんであわないか?」と言いだした。茂衛門は、泣き出しそうになったが、二人は別々になった。
すると八右衛門は、えのきの木の下にもどり、蜂が透かしていた、地面を掘ってみた。すると中から、こがねの入ったつぼが二つ出てきた。八右衛門は、つぼを二つ抱えて茂衛門を呼び戻そうとしたが、茂衛門の姿は、もう見えなくなっていた。
それから何年かが過ぎて、八右衛門は、伊勢で大金持ちになり、つぼ屋を開いていた。そこへ、以前と変わらぬ茂衛門が、噂を聞きつけてやってきた。ふたりは、再会を果たした。八右衛門は、自分の屋敷に茂衛門を招き入れ、あの時の一部始終を話して聞かせた。
そして、あの時掘り出したつぼのもう片方を茂衛門に譲り渡そうとした。しかし茂衛門は、「人からもらった金なんぞどうせ役には立たない」と言って断った。諦められない八右衛門は、「せめてつぼだけは、見ていってくれ。」と言いつぼを見せた。するとつぼの底に「都合七つ」という貼り紙がしてあった。
それを見つけた茂衛門は、すぐにあの時の場所に行き、えのきの木の下を掘ると、やはり残り5つのこがねの入ったつぼが出てきた。こうして、茂衛門も伊勢で大金持ちのつぼ屋になったが、これでは紛らわしいので、茂衛門は「東つぼ屋」八右衛門は、「西つぼ屋」と改めた。どちらとも大繁盛したという。
(投稿者: マニアック 投稿日時 2011-7-13 22:04 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 土橋里木(未来社刊)より |
出典詳細 | 甲斐の民話(日本の民話17),土橋里木,未来社,1959年03月31日,原題「東つぼ屋西つぼ屋」,採録地「西八代郡上九一色村」,話者「河野市作」 |
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