放送回 | No.0330(0207-A) |
放送日 | 1979年10月20日(昭和54年10月20日) |
出典 | 岸なみ(未来社刊)より |
クレジット | 演出:大竹伸一 文芸:沖島勲 美術:高松良己 作画:大竹伸一 |
ナレーション | 常田富士男 |
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むかし、甲斐の国に弓の上手な猟師がいた。
ある時、猟師は1匹の大鹿を追って伊豆の山奥までやって来た。猟師は、そこに住む村人たちから腕を見込こまれて、ある相談事を持ちかけられた。それは、村人たちが最も恐れる赤い2つの月についてであった。
この村と隣村との間には、婆娑羅峠(ばさらとうげ)があり、ここでは何人もの村人が何者かに飲み込まれていた。そんな夜には決まって、赤い2つの月が出るのだ。そこで村人は、猟師に化け物を退治してくれるように頼んだ。
猟師は峠道に腰を下ろし、夜が来るのを待った。すると、果たして峠には赤い2つの月が現れた。そこで猟師は2つの月の真ん中を狙って矢を放った。しかし、矢ははじき返され、なおも2つの月は猟師に近づく。とうとう猟師は赤い2つの月に飲み込まれてしまった。
猟師には甲斐の国に2人の娘がいたので、村人は娘たちに父親の死を告げ、泣いてわびた。
2人の姉妹の名は、姉が小松、妹が小杉といった。2人は次の日から、父親の仇を討つべく一所懸命に弓の練習をした。そして2年目の秋、姉妹は身支度を整えると、父の仇を取るべく婆娑羅峠へ向かった。村人は必死に2人を止めるが、2人の決心は固かった。
用意した矢は、それぞれ1本ずつ。鏃(やじり)は鋼(はがね)で出来ており毒が塗りこめられていた。2人は峠の岩陰に隠れ、化け物が現れるのを待った。すると、夜になり峠に2つの赤い月が現れた。ところがよくよく見れば、赤い月と見えたものは、なんと真っ赤に光る大蛇の2つの目であった。
2人は大蛇が近づいてきたところで岩の上に上がり、大蛇の2つの目を狙って矢を放った。矢は両方とも見事に命中し、大蛇は逃げようとするも、岩の間に体を挟まれて身動きが出来なくなってしまった。大蛇は7日7晩の間のた打ち回り、その心臓の鼓動は村の家々まで聞こえたという。しかし、さしものの大蛇も矢の毒が回ってとうとう死んだ。今でもこの地には、大蛇が挟まって死んだ蛇ヶ狭(じゃがさみ)と言う岩が残っている。
そして、小杉はその後この地にとどまり、末永く父の墓を守った。それからこの辺りを小杉原と呼ぶようになったそうだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-10-15 17:40 )
地図:小杉原(地図は適当) |