放送回 | No.0313(0196-A) |
放送日 | 1979年08月04日(昭和54年08月04日) |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
クレジット | 演出:古沢日出夫 文芸:境のぶひろ 美術:水野尾純一 作画:古沢日出夫 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、江戸の東、小松川の篠崎村あたりに、よく人をたぶらかす一匹の狐がいました。
また、この近くには、魚を売って暮らしている二人の若者も住んでいました。二人の若者のうち気の強い方の若者は、せっかく作った干し魚を狐に騙し取られる事に、いつも腹を立てていました。
ある時、気の強い若者が、草むらで昼寝している狐を見つけました。そこで、そっと狐に近づいて、思いっきり尻尾を踏んづけてやりました。すると、晴れわたっていた空がにわかに曇って、大雨が降ってきました。
慌てた若者は、近くの知り合いの家で雨宿りをさせてもらう事にしました。知り合いの家では、たまたま女房が死んだらしく、家の亭主は棺桶を担いでそのまま出ていきました。
若者は一人残され、囲炉裏(いろり)で着物を乾かしていると、死んだはずの女房が幽霊となって現れました。若者は、持ち前の気の強さで、幽霊と格闘しはじめましたが、どうやっても手におえません。若者は、ありったけの力で棒を振り回しました。
ちょうどその時、村の百姓たちが炎天下の中で畑仕事をしていました。ひょいと見ると、若者が一人で、転げたり倒れたりしながら何かと格闘しているようでした。百姓たちが冷たい水をぶっかけてやると、若者はようやく正気に戻りました。
これまでの事すべては、狐が仕返しのために見せた幻覚でした。その後、若者は赤飯と油揚げをお供えして、狐の祟りを払いました。
しかし、激しい雨も幽霊も幻覚でしたが、腕に噛まれた痛みだけは本当でした。昔はこんな不思議な事が、ちょくちょくあったそうです。
(紅子 2013-9-20 19:41)
地図:篠崎村(地図は適当) |