昔ある所にじいさんとばあさんが住んでいた。
ある日2人が縁側でうたた寝をしていると、縁側の下から一本の竹の子が生えてきた。その竹の子はそれからグングン伸び続け、やがて天まで伸びて頭が見えなくなった。どこまでも伸びた竹の子を見てじいさんは、その竹の子を登ってみることにした。朝早く登り始めて何時間も登り、ようやく頭に着くとそこは月の世界だった。
じいさんが月の世界を見回していると、遠くに大きな屋敷があって、そこからなにやら光るものが出て来た。そしてじいさんの前まで来ると「わしは星の子じゃ。じいさまを屋敷まで案内する」と言うとじいさんを乗せ屋敷まで連れていった。屋敷に入るとそこには美しい姫さまがいて、じいさんをごちそうや楽しい踊りでもてなしてくれた。
そして夕方、ばあさんが首を長くしてじいさんの帰りを待っているとじいさんが帰ってきた。じいさんから月の世界の話を聞いたばあさんは、今度はぜひ自分も行ってみたいと言うので、じいさんは連れていってやることにした。
じいさんは、ばあさんを革袋に入れて口にくわえて持っていく事にした。運んでいる途中、口を開けたら落っこちてしまうので、決して「話し掛けないように」と、ばあさんに言いきかせて出発した。しかし、途中でばあさんはどうしても我慢できずに話しかけはじめ、じいさんは口が開けないので「うんうん」と言っていた。
じいさんはもくもくと登り続け、ようやく竹の子のてっぺんが見えかけた時つい、「ばあさま、着いたぞ!」と口を開けてしまった。その拍子にばあさんを入れた袋は、まっ逆さまに地上へ落っこちてしまった。
じいさんが地上へ戻ってみると、ばあさんの姿は無く、ただ畑の蕎麦の根元が真っ赤に真っ赤に染まっていた。ばあさんの血で染まったのだろう。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 石崎直義(未来社刊)より |
出典詳細 | 越中の民話 第一集(日本の民話35),伊藤曙覧、石崎直義、佐伯安一,未来社,1963年09月20日,原題「天までとどいた竹の子」,採録地「西砺波郡」,話者「石崎しげ」 |
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