昔、京都の伏見に六兵衛という酒造りの名人がいました。六兵衛の作る酒は評判も良く、正直者で人柄の良い男だったので、商売も大繁盛でした。
ある日、酒蔵の前にクマンバチが巣をつくりました。使用人たちは「刺されたら危ないので今のうちにやっつけてしまおう」と言いましたが、六兵衛さんは「こっちから何かしなければ、蜂も刺さないから」と言って、そのままにしておきました。
やがて、クマンバチたちは酒樽から酒を飲むようになりました。使用人たちは、勝手に酒を飲む蜂たちに腹を立てましたが、六兵衛さんは「蜂の飲む量など大したこと無いから」と、蜂たちに好きなだけ酒を飲ませてあげました。
ある夏の事、六兵衛さんたちはいつものように馬に酒樽を載せて、遠くまで配達に出かけました。深い山の中の道にさしかかった時、突然山賊たちに襲われました。六兵衛さんたちは、一人一人バラバラに逃げたので全員無事でしたが、馬と酒樽を全部山賊たちにとられてしまいました。
すると、遠くからクマンバチの大群が押し寄せてきて、山賊の隠れていた洞窟の中へ突撃していきました。蜂たちは、中にいた山賊たちをさんざん追まわし、全身を刺しました。突然蜂の大群に襲われた山賊たちは、馬も酒樽も置いてどこかへ逃げていきました。
クマンバチのおかげで、六兵衛さんは無事、馬も酒も取り戻すことができました。蜂たちは、いつもお世話になっている六兵衛さんに恩返しをしたのです。
(紅子 2013-7-16 1:56)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 花岡大学(鎌倉書房刊)より |
出典詳細 | 父母が語る日本の民話(下巻),大川悦生,鎌倉書房,1978年4月20日,原題「六兵衛とクマンバチ」 |
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