昔、天草のある村に、金貸しの地主とその娘が住んでいました。この地主が持つ土地にはでっかい大岩があって、動かすこともできずいつも苦々しく思っていました。
ある時、「大岩を動かした者には娘を嫁にやる」と、村中に触れ回りました。しかし、地主の娘など誰も欲しがらず、一匹のイノシシだけが集まってきました。怒った地主は「娘と全財産をやる」と村中に触れ回ると、今度は大勢の力自慢の男たちが大集合してきました。
しかし、どんな怪力の大男にもこの大岩を動かせず、結局あのイノシシだけが岩を動かしてしまいました。さずがの地主も今さら断るわけにもいかず、仕方なく娘に晴れ着をきせて、嫁に出すことにしました。
喜んだイノシシは、娘を背中に乗せて山に向かって走り出しました。しばらく走った所で、娘は晴れ着のたもとから火打石を取り出し、イノシシの背中に敷いていたワラに火をつけました。火だるまになったイノシシは、崖から落ちてそのまま死んでしまいました。
この話を聞いた村人たちは「いくらなんでもイノシシが可哀そうだ」と言って、旧暦10月最初の亥の日に、亥の子祭りを行うようになりました。
(紅子 2011-12-6 20:32)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 浜名志松(未来社刊)より |
出典詳細 | 天草の民話(日本の民話47),浜名志松,未来社,1970年03月20日,原題「亥の子まつり」,採録地「鬼池」,話者「林留市」 |
場所について | 鬼池エリア(地図は適当)話者 |
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