ものすごく貧乏な男がいたが、それは家に貧乏神が住んでいたからだった。その暮らしを見かねた村の人たちが、その男に嫁を世話してやった。嫁はとても働き者で朝から晩まで良く働いた。それにつられて男もせっせと働いたので、貧乏神はだんだん居づらくなってきた。
ある年の大晦日、夫婦が年越しの支度も済ませて正月を迎えようとしていると、天井裏から泣き声が聞こえる。見てみると貧乏神が泣いていて、明日福の神がやってくるので、それまでに家を出なくてはならないと言う。
やさしい夫婦は貧乏神にずっといても良いというので、貧乏神は今度は嬉しくて泣いた。除夜の鐘がなり、福の神がやってくるなり、貧乏神を力ずくで追い出しにかかった。貧乏神と福の神の押し合いになり、貧乏神が押されていると夫婦がこれを助けて福の神を家の外に追い出した。
驚いたのは福の神。自分は歓迎されるものとばかり思っていたので、呆然としてしまった。しばらく考えていたが、首をひねりながらもと来た道を帰っていった。その後、貧乏神の住むこの家は金持ちにはならなかったが、それでも結構幸せに暮らしたとさ。
(稿: 蔵人 本掲載日2012-8-14 5:59 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
備考 | 狢工房様のクレジット情報による |
DVD情報 | DVD-BOX第6集(DVD第27巻) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第2巻-第007話(発刊日:1976年5月31日)/童音社BOX絵本_第42巻(発刊日不明:1970~1980年頃)/二見書房まんが日本昔ばなし第2巻-第06話(発刊日:2005年10月17日)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第14巻(絵本発刊日:1984年10月15日)/講談社テレビ名作えほん第016巻(発刊日:1977年12月) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説によると「東北地方の昔ばなし」 |
童音社の絵本より | 絵本巻頭の解説(民話研究家 萩坂昇)によると「東北地方の昔ばなし」 |
講談社のデラックス版絵本より | 昔ばなしには、貧しくとも正直で勤勉な人間はいつかは報われるという話が多く見られますが、いっそのこと貧乏神と仲良く暮らそうじゃないかという話もよく語られてきました。骨惜しみせずに汗水流して働けば必ず暮らしは楽になるに違いないという願望と、さりながら、働いても働いてもすこしも楽にならないという現実とのはざまから、二つのタイプの話ができたのでしょう。本来なら待ち望んでいた福の神なのに、貧乏神に力を貸して福の神を追い出してしまうとは…。貧乏を笑い飛ばし自らを励ます、生きるたくましさを感じらせられます。(東北地方の昔ばなし) |
講談社の300より | 書籍には地名の明記はない |
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