No.0263
えちごのきょうだい
越後の兄弟

放送回:0164-B  放送日:1978年12月16日(昭和53年12月16日)
演出:西牧ひでお  文芸:沖島勲  美術:小関俊之  作画:中山晴男
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あらすじ

昔、越後のある家に、生来の道楽者の兄と、真面目で働き者の弟がいました。ほとほと兄に手を焼いた父親は、親子の縁を切り家から追い出してしまいました。父親はそれからしばらくして死んでしまい、残った貧乏な母子は暮らしが立ち行かなくなりました。

仕方なく、親類に母親を預けて、弟は江戸の医者のところへ奉公に行きました。せっせと働いた弟は、10年かかって十五両もの大金を貯金する事ができました。そこで、医者からお暇をもらって故郷に残していた母親を引き取るために、帰省することにしました。

人里離れた山道を急いでいると、いきなり山賊たちに襲われ、お金も着物も何もかも奪われてしまいました。これでは帰省する事も、再び江戸へ向かう事も出来ず、弟はしばらくの間山賊たちのところで下働きさせてもらう事にしました。せっせと働く弟を山賊たちも重宝しましたが、もう一度江戸で働きたいという弟に、護身用の錆びた刀を渡して快く送り出しました。

再び江戸にもどった弟が、もらった刀を売ると三十両もの大金になりました。そこで弟はもう一度、母の待つ故郷に向かって出発しました。その途中、山賊の家に立ち寄り、差額の十五両を山賊の親方に返しました。

この律儀で正直で頑固な弟に、これまでの生い立ちを尋ねた山賊の親方はハッと気が付きました。「お、お、弟よ、わしはお前の兄じゃ。幼い頃に悪党だったために家を追い出され、このような山賊になっていたんじゃ」と涙を流しました。親方は、これまで奪った宝物を全部手下たちに分け与え、弟と一緒に故郷へ出発しました。

兄弟は、母を引き取り田畑も買い戻して、親子三人でなかよく暮らしました。

(紅子 2012-5-7 1:48)


ナレーション常田富士男
出典川崎大治(童心社刊)より
出典詳細日本のふしぎ話(川崎大治 民話選3),川崎大治,童心社,1971年3月20日,原題「越後の兄弟」
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※掲載情報は 2012/5/7 1:48 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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Perenna  投稿日時 2021/10/30 22:31
この昔話は、「日本の伝説41・越後の伝説」にも紹介されています。

「長岡から二つ目の押切駅で下車、徒歩七分ぐらいのところに筒場という部落があり、ここに筒場の長者という伝説がある。
昔、筒場に二人の兄弟があった。兄は出稼ぎに出たまま行方不明となり、弟は江戸へ出て一生懸命に働き、たくさんの金をためた。そのうち弟は郷里に帰って家を再興しようと、ためた50両を持って江戸を出た。上州と越後の境まで来ると、日が暮れてしまった。そのとき目の前に人家の明かりが見えたので訪ね、一夜の宿を頼んだ。ところが、この家は山賊の住家だった。このため脅かされて金を巻き上げられたが、狼に襲われたときの用心にと束ねてあった刀の山から、一本もらって出た。彼は金をなくしたので郷里へは帰らず、再び江戸へ出た。元の主人を訪ね刀を見せたところ、非常な名刀であることがわかり、すぐ100両に売れた。そこで彼はこれを持って、再び越後へ向かった。途中、山賊の家へ立ち寄り、刀の話をし、前にとられた50両を、「これはお前の金だ」といって出した。この正直さに驚いた山賊は、彼の名前を尋ねたことから、二人は子供のころ別れた兄弟だとわかり、思いがけぬ巡り合いを喜んだ。そしていっしょに郷里に帰り、100両で田畑を求め一生懸命働いたので、筒場の長者といわれるほどの大金持ちになったという。」

筒場というのは現在の地名では、長岡市新組町字筒場らしいです。
ゴンザ  投稿日時 2020/5/15 22:18
弟が聖人すぎる
華煌  投稿日時 2020/2/9 21:47
律儀で正直で頑固な弟の、ぶれない生き方が親子兄弟を結びつけたのでしょうね。
家族みんなが幸せになれて、嬉しくなりました。
お父さんはおかわいそうでした。
でもあの世で嬉しく家族を見守っていらっしゃることでしょう。
ゲスト  投稿日時 2018/4/15 17:38
事情は何であれ、家族が仲良く暮らせて良かった。
のめたん  投稿日時 2017/8/22 20:33
このお話は絵柄はお子様向けですが大人が見ても泣ける話です。(´;ω;`)
昔話では貧しくて仕方なく家族が離ればなれになる話が多くて現代がいかに恵まれているかを再確認できますね。
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