放送回 | No.0258(0161-A) |
放送日 | 1978年11月25日(昭和53年11月25日) |
出典 | 土橋治重(角川書店刊)より |
クレジット | 演出:漉田實 文芸:漉田實 美術:田中静恵 作画:前田実 |
ナレーション | 市原悦子 |
山梨県の信州との国境、八ヶ岳のふもとに猟師の男が住んでいた。
ある日、男は山に猟に出るが、どうしたことか今日に限って山には動物の気配がなく、山は静まり返っていた。しばらくすると、辺りに煙がたちこめてきた。山では山火事が起きており、動物たちは山火事を察知して逃げていたのだ。
男は大急ぎで山を下った。山を下る途中、男は木の枝に一匹の蛇の子どもを見つけた。どうやら蛇の子は、山火事から逃げ遅れて取り残されたようだった。男は不憫に思い、蛇の子を鉄砲の先に乗せて一緒に山を降りることにした。そして安全なところまで来ると、男は蛇の子を野に放してやった。
それからまたしばらく男が歩いていくと、日も暮れてないのに急に辺りが真っ暗になってしまった。道の先に一軒のあばら屋が見えたので、男はここで提灯でも借りようと思い一軒屋の前に立った。中からは老婆が出てきて、男を家の中に招き入れる。老婆が男に言うには、自分は先ほど男が助けた蛇の子の母親で、男に何かお礼がしたいということだった。
男は特に欲しいものも思い当たらず、とりあえずのどが渇いたので、水を一杯と老婆に言った。すると老婆は、男が言った“一杯”をいっぱい、たくさんと聞き間違え、一本の葦(あし)の茎を持ってきた。老婆は葦の茎を男に渡すと、この中の水を地面にたらせば、どこでも好きな場所から水が湧くと言って消えてしまった。
辺りは昼間に戻り、男は自分の村に向かって歩いていった。男は村の入り口まで来たが、用を足したくなったので、葦の茎を木に立てかけた。ところが、そのとき風が吹いて茎は倒れてしまい、中の水がこぼれてしまった。すると、水がこぼれた地面からは勢いよく水が湧き出た。喜んだ男は村の中心に行き、そこで茎の中の水をたらした。しかし、茎の中の水が少なかったので、今度は小さな泉が出来たということだ。
そして、男が先に作った泉が北巨摩郡高根町原長沢の泉で、後に作った泉が同じ字(あざ)の祖師堂の泉だと言われている。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-8-13 9:37 )
地図:公民館の周辺か(地図は適当) |