ある村にひどい怠け者の男がおって、子供達が泣いても嫁さんが怒鳴っても寝転がって休んでばかりなものだから家は食うにも困る有様だった。
そんな夏のこと、野原でゴロゴロしていた男はアリにまで自分らを見習えと説教されるがそれでも働こうとしない。するとアリは好い事を教えてやると言って、山のお宮に住む大黒様の持っている振れば何でも出てくる打ち出の小槌を借りろと勧める。
働かずに食っていけると喜んだ男はさっそくお宮を訪ねるが、大黒様がいう事には、小槌を貸すのはいいが柄が折れていて使えないとの事。そこで男は家から鍬を持って来てその柄を代わりに出来るかときくが、今度は大黒様は小槌の柄の形は持つところがくぼんていて黒光りしていなくてはダメだという。
それで男は柄を凹まそうとその鍬でせっせと自分の畑を耕し始める。あの怠け者がどうして?と村人に不思議がられながらも毎日休まず働いたので鍬の柄は黒光りしてきた。しかしなかなか凹むまでにはならない。
そうこうして一年二年が過ぎる頃、大黒様が男の様子を見に山から降りてみると、男の畑では作物がたくさん採れ女房子供も充分食える暮らしぶりになっている。聞けば男は小槌の事をすっかり忘れていたというものだから大黒様は大笑いして安心してお宮に帰って行った。
(投稿者: ひかる 投稿日時 2012-1-27 9:21 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 土屋北彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 大分の民話 第二集(日本の民話59),土屋北彦,未来社,1976年05月15日,原題「小槌の柄」,採録地「杵築市」,話者「重安あさえ」 |
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