昔々、あるところに、歳を取った母と五作という親孝行な息子が、二人で暮らしていました。五作は貧乏でしたが信仰深く、朝夕近くのお地蔵さまに手を合わせておりました。
ある日、母が「お前のお父が生きておった頃、よくマクワウリ(甜瓜、メロン)を買ってきてくれたもんじゃ。ありゃうまかった」と言いました。
五作は、母のそんな話を聞いて、悪いことだと思っていましたが、近所の畑からマクワウリを盗んでしまったのです。何も知らない母親は、うまいうまいと言ってマクワウリを食べました。
しばらくして、母親が「もう一度だけマクワウリを食べたい」と言うので、五作は再び畑に盗みに入りました。けれど運の悪い事に、五作は畑の主人に見つかってしまったのです。怒った主人は持っていた刀で五作の肩を切り付け、気を失っている五作を残して去っていきました。
次の日、畑の持ち主はすっかり後悔しておりました。ウリの一つや二つ盗んだくらいで、刀で切りつけるなどと、あまりにひどいことをした。そう思いながら、五作の家への道をやってくると、村人たちがお地蔵さんの祠の前に集まっていました。
なんとお地蔵さまの肩のところに、刀で深く切られた跡がありました。畑の持ち主は大急ぎで五作の家へ行き、無傷の五作を見て驚きました。畑の持ち主は五作の手を引っ張って、お地蔵さまのところへ連れていきました。
五作はお地蔵様を見て涙を流しました。「ああ、このお地蔵さまが、わしの身代わりになって下さったのか、お地蔵様ゆるしてくだせぇ」そう言って息子はガックリと膝をつくと、お地蔵さまに謝りました。
やがてこの話は広まり、このお地蔵さまは『身代わり地蔵』と呼ばれて、人々から敬われ、慕われたということです。
(投稿者: マルコ 投稿日時 2013-8-21 17:50)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 土屋北彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 大分の民話 第一集(日本の民話49),土屋北彦,未来社,1972年08月15日,原題「身代わり地蔵」,採録地「大分市」,雉城雑誌より |
場所について | 首なし身代わり地蔵か?(地図は適当) |
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