放送回 | No.0234(0146-A) |
放送日 | 1978年08月12日(昭和53年08月12日) |
クレジット | 演出:川尻善昭 文芸:沖島勲 美術:川尻善昭 作画:川尻善昭 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、熊本の益城(ましき)に福田寺(ふくでんじ)というお寺がありました。ここの和尚さんはとても知恵者だったので、あちこちのお坊さんたちが教えを受けに集まってきました。
ある時、一匹の鬼がやってきて「わしゃ鬼ばってん、弟子にしてください」と頼みました。心の広い和尚さんは、他のお坊さんたちと一緒に弟子にしてやることにしました。
鬼は顔は恐ろしいものの、大変な働き者でした。しかし寝る時のいびきがすごいので、和尚さんは寺の近くに鬼専用の小屋を作ることを提案しました。鬼は大きな岩を積み上げて「岩屋」を作って、そこで一人で寝ることにしました。
さて、この頃、近くの上徳(じょうとく)という所にお堂を建てる事になりました。この時の鬼の働きは素晴らしく、思ったよりも早く仕事が進みました。喜んだ和尚さんは、みんなに「そばきりだんご汁」を振舞いました。
みんなは大喜びでだんご汁を食べ始めましたが、鬼があっという間に全部食べてしまい、みんなはほとんど食べられませんでした。
鬼はそれからも一生懸命働いたので、立派なお堂が完成しました。そしてまた、みんなでそばきりだんご汁を食べる事になりました。
和尚さんは「また鬼に全部食べられてしまう」と心配して、だんご汁の中に孟宗竹(もうそうだけ)を切って入れました。竹は汁の中で浮かぶので、おかわりが早い鬼が真っ先に竹を食べるだろうと考えたからです。
しかし、竹を噛んだ鬼の歯は、全部欠けてしまいました。鬼は「歯が痛い、だんご汁も食べられなくなった」と、オイオイと泣き続けました。それを見た和尚さんは「大丈夫、来年になったら良い歯が生えるから」と慰めました。
それを聞いた鬼は「それはよかった、来年になったら歯が生える!」と喜んで、にっこり笑いました。「来年の事を言うと鬼が笑う」という言葉は、この時から始まったそうです。
(紅子 2013-9-13 19:28)
地図:益城の福田寺(今は寺跡のみ) |