昔、ある村に働き者の福助さんという男とその嫁がいた。
福助さんの仕事は「ボロ買い」で、嫁は夫が仕事をしている間は、家事もせずタチの悪い人たちと酒を飲んだりして遊んでいた。仕事から腹ペコで帰ってきても、嫁は「腹が痛かったから飯は作っていない」などとウソをいうありさまだった。
ある日、福助さん仕事に行く途中で何のへんてつもない竹筒を見つけ、家に持って帰った。そして嫁の目の前で竹筒を覗きながら、「お前は昼間タチの悪い人たちと遊んでいたじゃろう、何でもお見通しだ」と、遊びほうけていた嫁を戒めた。
ズバリ指摘された嫁は驚き、福助さんに謝った。それから福助さんの不思議なノゾキメガネの事は、村じゅうに知れ渡り、ついには城下まで伝わった。丁度その頃、殿さまが将軍さまから頂いた大事な小刀が無くなったので、城では大騒ぎだった。そこで、家老直々に福助さんの家まで出向き、小刀を探すために城へ向かうカゴへ乗せられた。
そもそも竹筒は何の効力もないので、困っていた福助さんは、峠道でスキをみて逃げ出した。近くの茂みに隠れていると、偶然、近くで泥棒が城から盗み出した小刀を隠しているところを目撃した。
城に到着した福助さんは「竹筒の効力はこれで最後です」と念を押したうえで、先ほど泥棒が隠していた場所を殿さまに教えてやった。小刀が見つかった殿さまはたいへん喜んで、ただの竹筒を高価な値段で買い取ってくれた。福助さんは、無事に城から帰って、また元のボロ買いの仕事に励んだのだった。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-9-22 20:20 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 愛媛のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 愛媛のむかし話(各県のむかし話),愛媛県教育研究協議会国語委員会、愛媛県教育会,日本標準,1975年11月10日,原題「福助さんのノゾキメガネ」,話者「中村冨貴子」,再話「中村寿孝」 |
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