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牛女(うしおんな)

放送回No.0211(0130-B)
放送日1978年04月15日(昭和53年04月15日)
出典新潟のむかし話(日本標準刊)より
クレジット演出:漉田實 文芸:漉田實 美術:馬郡美保子(田中静恵) 作画:矢沢則夫
ナレーション常田富士男

山に姿を現して子供を見守る母の話

昔、国境を山に囲まれたある村に、大きな体で力も強くて気が優しく、もくもくと良く働く姿から牛女と呼ばれる女がいた。牛女には小さな男の子がいた。仕事の時も連れて歩き、村人達はそんな親子の姿に温かいものを感じたが同時に不憫に思った。牛女は耳も聞こえず口もきけなかったからだ。親子は貧しくも幸せに暮らしていたが、ふとした事から牛女が病気になり子供の看病もむなしく死んでしまった。村人達は残された子供を村中の家で面倒を見た。

冬になると子供は国境の山を眺める様になった。村人が尋ねると「山からおっ母がおらを見てるだ」と言う。皆は不憫に思ったが、牛女が子供を思って姿を現すのが見えるのかもしれないと思った。子供は成長して遠くの町に働きに出たが、その後消息は絶えて村人達も親子の事を話さなくなった。

何年か経った頃、牛女の子はひょっこり帰って来た。立派になった子供は村で梨作りをして恩返しがしたいと村人達と広い梨畑を作った。苗木を植えて三年目の春には白い花が枝いっぱいに付き皆大喜びしたが、秋になると何故か梨の実に急に虫が付き、翌年もその次も、その度に嵐など悪い事が続き実は全部駄目になった。子供は働いて貯めたお金も使い果たし、村人達も何かの祟りではないかと次々手を引いてしまった。子供はすっかり気落ちして歩いていたら国境の山が見える丘に出ていた。母の事を思い出していると、以前と変わらない母の姿が山に現れた。その優しい姿を見ているうちに子供は元気を取り戻し、荒れた梨畑の手入れを続けた。

翌年天気にも恵まれ梨の実は見事に実った。村人達も喜び、話を聞いて子供の事はちゃんと牛女が守っていると感心した。子供はその後も見事な梨の実を作り続け「ありの実長者」と呼ばれた。ありの実は梨の実の事だが、「ナシ=無し」では縁起が悪いのでナシをアリ(有り)と言い換えたのだ。村ではその後も冬になると牛女が山に現れて村を見守っているといわれ、誰でもその姿を見られる様になったという事です。

(投稿者: 雪国のクマ 投稿日時 2012-2-11 20:13 )


地図:牛ヶ岳(六日町の伝説で牛女が姿を現すとされる)

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