放送回 | No.0207(0128-A) |
放送日 | 1978年04月01日(昭和53年04月01日) |
出典 | 新潟のむかし話(日本標準刊)より |
クレジット | 演出:藤本四郎 文芸:沖島勲 美術:田中資幸 作画:高橋信也 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、伊勢神宮は全国から多くの参詣人を集めていた。その伊勢参りの帰りに、近くに宿をとって休んで行くので大通りは繁盛していて、その裏の通りに五平(ごへい)という、夫婦の宿があった。
ある日、五平の宿に二人の娘がやって来た。その二人は、お杉とお松といい、越後(えちご)の石瀬村(いしぜむら)から来たという。五平さん夫婦は、お杉とお松に伊勢神宮で何をお願いしたか聞くと「田中屋という団子屋のおかみさんの腰が治るようにと、長兵衛さんの怪我が治るようにと、六助さんとお清さんが早く結ばれますように、とお願いしました」と言った。五平さん夫婦は、優しい娘たちにとても感心した。
次に日の朝になって、娘たちが宿代の二百文を払おうとしたがお金が少々足りなかった。ばあさんが「今度じいさんが越後へ行く用事があるから、その時に払えばえぇ」と言って、二人が心配しないようにしてやった。
しかしその年の夏、本当に五平さんが村の寄り合いで越後へ行くことになった。五平さんは、越後での用事をそうそうに済ませ、石瀬村へ向かった。しかし、村中を訪ねて回っても誰もお杉とお松という娘の事を知らなかった。
五平さんは、娘たちと出会ったいきさつを団子屋のおかみさんに話して聞かせた。すると不思議なことに、ちょうどお杉とお松がお参りした頃におかみさんの腰が治ったと言う。長兵衛の怪我もその頃に治り、また六助さんたちもその頃に縁談がまとまったと言った。
やがて夕方になり、五平さんは二人に会えなかった事を残念に思いながら、もと来た道を帰ろうとして大きな杉の木の近くを通りかかった。すると、杉の木に女物の巾着袋がぶら下がっていて、中には二百文入っていた。この杉の木のそばには、松の木もあった。
この事を知った村人たちは、「村の人の事を思って、杉と松の精が抜け出して、お伊勢さまへお参りされたんじゃ」と言い、村人たちは杉と松に手を合わせた。五平さんは二人に再会できたことを喜び、二本の木にずっと話しかけていた。親切な松と杉の精の話です。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-28 15:23)
地図:石瀬の一本杉(お杉) |