放送回 | No.0182(0113-B) |
放送日 | 1977年12月10日(昭和52年12月10日) |
クレジット | 演出:小林三男 文芸:沖島勲 美術:青木稔 作画:昆進之介 |
ナレーション | 常田富士男 |
昔、出羽の国でお殿様が貝吹きの大会を催した。それに参加した旦次という少年は、大変良い音色で貝を吹き、お殿様はじめみんなを驚かせた。お殿様から褒美を送られた旦次であったが、旦次はそれに飽きたらず磐城の国にある大貝を吹いてみたいと言った。
「磐城の大貝」といえば四尺もの大きさがあり、とても人が吹けるような大きさではない。お殿様始め家来も一笑に付すも、もしお殿様が磐城の国に行くときには、旦次もお供することになった。
この日から旦次はお城の貝吹きの役についた。毎日出羽の国に響き渡る旦次の貝の音色は、人々の心にも響いた。こうして旦次は「貝吹き旦次」として有名になっていった。
ある日のこと、仙台の浜辺に三尺もある大きな貝が流れ着いた。それを見つけた山伏たちは、これは「磐城の大貝」の仲間なのではと思い、磐城の国に返すこととした。旦次はこの事を聞きつけ、その大貝を吹かせてほしいと山伏たちに頼むのであった。そして旦次はその三尺の大貝を見事に吹いてしまった。響き渡る大きな音に山伏たちは驚き、これは羽黒山の神様の声なのではと恐れおののく程であった。
それから時が経ち、旦次が27歳の時のこと。ようやくお殿様が磐城の国に用事で行くこととなった。旦次も一緒に行くことを願い出て、許しが出た。「磐城の大貝」は山の神社に祀られておった。旦次は神社に着くと、さっそく大貝を吹いた。しかし、さすがの旦次ですらも、いくら吹いても音は出ない。お殿様も「もうよいではないか」と旦次をなだめ、神社を後にして帰路につく。
さて、神社を発ってからしばらくして、お殿様は一行の中に旦次がいないことに気が付いた。その時割れんばかりの大きな音が響いた。あわててお殿様が神社に戻ってみると、神社の扉が破られ、旦次が「磐城の大貝」を抱いて息絶えていた。旦次は「磐城の大貝」を見事に吹いたのである。お殿様は「旦次、あっぱれであるぞ」と声をかけた。
この話はやがて出羽の国中に伝わり、人々は「貝吹き旦次」のことをいつまでも語り継いだということである。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/3/2 11:30)