昔ある所に、「やたみ」という杣師(そまし、木こり)の若者がいました。
ある日の事、空にきれいな虹がかかっているのを見つけ、虹をよく見ようと湖まで歩いて行きました。すると、空から七色の羽衣をまとった美しい天女が舞い降りてきました。やたみは一目で天女に恋をし、どうか自分の嫁になってくれるよう天女にお願いしました。
しかし天上界にすむ娘が、地上の男と結婚することはできない定めでした。どうしても諦めきれないやたみに、天女は「いつか地上の人に生まれ変わる事があるので、その時は私の目の下の青いホクロを目印にして探してください」と言い残し、天界に帰って行きました。
それからのやたみは、ホクロの娘を探すために山を下り、あちこちの町や村で娘の姿を探しました。なかなか娘は見つからず15年の年月が経ち、やたみは杉山長者の所で山仕事をして働くようになりました。
ある時、顔が真っ黒の娘「ななえ」が、山仕事の手伝いとしてやたみの元へ配属されました。やたみは親切にななえの面倒を見てあげ、一緒に山仕事をするようになりました。
やがて仲良くなったななえから、自分の顔が真っ黒になった理由を聞きました。継母が自分の本当の娘を長者の嫁にするために、継子だったななえの顔にスミを塗り込んだ、との事でした。それを聞いたやたみは可哀そうに思い、丁寧にななえの顔を拭いてあげました。
すると、ななえの顔は雪のように真っ白い肌に戻り、さらに今まで見えてなかった目の下に、青いホクロがある事に気が付きました。やたみは、16年前に出会った天女の生まれ変わりがななえだった事を知り、ななえもその時の事を思い出し、二人はひしっと抱き合いました。
(紅子 2012-7-17 19:16)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
出典詳細 | タイトル部に明記はないが、里の語りべ聞き書き 第11巻,川内彩友美,三丘社,1992年06月10日,原題「虹の嫁」、が出典元と思う。 |
備考 | 里のかたりべ・むかしばなし(テレビスペシャル) |
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