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小判の虫ぼし(こばんのむしぼし)

放送回No.0144(0089-A)
放送日1977年06月18日(昭和52年06月18日)
出典松谷みよ子(講談社刊)より
クレジット演出:藤本四郎 文芸:沖島勲 美術:田中静恵 作画:高橋信也
ナレーション常田富士男
備考採録地は転載された本(日本の民話09,松谷みよ子,角川書店,1973年11年25日)で確認

太郎が小判の虫ぼしの番をする。

昔々、ある村に太郎という男の子がいた。この太郎、ちょっと変った子で、いつも雲などをぼんやり眺めていた。もうそろそろ、おっとうやおっかあの仕事の手伝いをしてもいい年頃だったが、太郎は日がな一日、ブラブラしているだけだった。

あるよく晴れた日のこと、朝から家でゴロゴロしている太郎を見かねて、おっかあは太郎に山に草刈りに行くように言った。

そこで太郎は、この日珍しく山へと出かけた。山の上からは海がよく見え、海面は日の光を反射してキラキラ輝き、それはなんとも綺麗だった。太郎は草刈りのことなどすっかり忘れて、海を眺めていた。

心地よい秋風に吹かれ、太郎はいつしか山の上でうたた寝をしていた。するとどこからか、「チャリン、チャリン」という妙な音が聞こえて来る。太郎が目を覚まし、辺りを見回してみると、なんとネズミたちが小判を背負いながら山を登って来たのだった。

太郎が見ていると、ネズミたちは持ってきた小判を野原に並べ始めた。そして小判を全部並べ終わると、もと来た道を戻って行くのだった。後には、野原一面に敷き詰められて小判だけが残った。

小判は海の光に当たり、その色は赤になったり、青になったり、または金になったりと、様々に変化した。太郎は、この美しく光る小判に目を奪われ、小判の山をただじっと眺めているのだった。

やがて日が暮れると、ネズミたちがまた山の上にやって来た。そして敷いてあった小判を担ぎ上げると、また山を下って行ってしまった。太郎も、ネズミたちの小判の虫ぼしが終わったので、家に帰ることにした。

ところがその夜、太郎が家にいると何者かが家の戸を叩く音がする。おっとうとおっかあが出てみると、そこには昼間のネズミが立っていた。ネズミは、太郎のおかげで猫にも襲われず、無事に小判の虫ぼしが出来たので、そのお礼がしたいという言うのだった。そして、お礼に小判を数枚置いて帰ってしまった。

こうして太郎は、ネズミたちから小判をもらったが、その後の太郎は特に変わった様子もなく、相変わらずブラブラしていたそうな。

 

(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-12-3 9:15)


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