昔、信州は和合村三度(さんど)にある和合川に、一匹のカワランベー(河童)が住んでいた。この河童は、立派なお膳やお椀を必要なだけ貸してくれるので、村人達から大変ありがたられていた。
ある日、長者の使用人である一番年若い子守娘が、顔にできたイボが治らず困っていた。そこで「イボに効く」という噂のカワランベーのいる黒淵の水で顔を洗わせてもらおうと、姉さん女中と二人で出掛けた。カワランベーは、子守娘に快く水を使わせてあげたが、子守娘の前歯が折れていた事を冗談のつもりで冷やかした。
しばらくして、長者が借りていたお膳を返すことになり、子守娘が持っていくことになった。カワランベーの好物である「冷たいみそ汁」も一緒に運んでいたが、その途中、道端に生えていた蓼(タデ)の葉をこっそり入れた。娘にとっては、ちょっとした仕返しのつもりだった。
カワランベーは、好物のみそ汁を何の疑いもなくゴクリと飲み込んだ。しかし、カワランベーにとってタデの葉はとても辛く、喉を焼き焦がすものだった。口から黒い煙を吐ながら苦しみもだえ、空に黒雲を呼び嵐を起こし川を氾濫させ、七日七晩大暴れした。
それ以来、カワランベーは和合川から姿を消した。そして村人たちは、二度と椀や膳を借りる事が出来なくなってしまった。
(紅子 2011-10-28 1:30)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 長野の伝説(日本標準刊)より |
現地・関連 | お話に関する現地関連情報はこちら |
場所について | 和合村の和合川(地図は適当) |
このお話の評価 | 6.80 (投票数 5) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧