放送回 | No.1397(0888-A) |
放送日 | 1993年05月15日(平成05年05月15日) |
出典 | 新潟の昔ばなし(三丘社刊)より |
クレジット | 演出:若林常夫 文芸:沖島勲 美術:小出英男 作画:若林常夫 |
ナレーション | 常田富士男 |
昔ある所に、爺さんと婆さんがいて、久しぶりにぼた餅を作って食べようとしていました。
二つ作ったぼた餅の餡子(あんこ)の量は、ちょっとばかり婆さんの方が多かったので、二人はぼた餅の取り合いをしていました。ちょうどその時、旅の坊さんが一晩の宿を求めてやってきました。
二人は急いで納戸の中にぼた餅を隠して、素知らぬ顔してお坊さんを迎え入れました。そして、夜中に坊さんが寝込んでいるうちに、こっそりと二人だけでぼた餅を食べようと示し合わせました。
夜も更けた頃、婆さんは、爺さんを起こすつもりが、隣に寝ていた坊さんを起こしてしまいました。坊さんを起こした事に気が付かず、婆さんは暗闇の中でぼた餅を手渡しました。
まさに坊さんの口にぼた餅が入ろうとした瞬間、爺さんが「それは俺のぼた餅だ!」と飛び起きました。坊さんは、ぼた餅を持ったまま家から逃げ出し、爺さんはやみ夜の中を墓場まで走っていきました。
坊さんを追い詰めた爺さんは、投げ縄よろしく坊さんを縛り上げ、井戸の中へ投げ込みました。爺さんは「井戸の中へドボンしてでも、ぼた餅が喰いたいのか?」と言いながら、坊さんを水攻めにしました。
爺さんは「ドボンが良いか?ガボンがいいか?ドボンガボン」と言いながら、何度も何度も坊さんを水につけたり上げたりしました。すると坊さんは、墓石に姿を変えました。
それを見た爺さんは驚き恐怖におののきましたが、なんとこれは全部夢でした。この話を聞いた婆さんは「餡子の量でもめたりするから変な夢をみるんじゃ」と笑い飛ばしました。
それからも二人は小さい喧嘩をしたりもしましたが、おおよそ仲良く暮らしましたとさ。
(紅子 2013-8-3 18:08)