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No.1373
せけんしらずのいせまいり
世間知らずの伊勢参り

放送回:0872-A  放送日:1993年01月09日(平成05年01月09日)
演出:小原秀一  文芸:沖島勲  美術:安藤ひろみ  作画:小原秀一
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見栄っぱりの父親が、初めて見た食べ物の間違った食べ方を家族に教える話

昔々、阿波の国の山奥に住む百姓の親子が、三人そろってお伊勢参りに出かけました。

親子が泊まった最初の宿では、名物として当時は珍しかった「饅頭」が出されました。親子は饅頭の食べ方が分かりませんでした。見栄っ張りなお父ちゃんが「こうやって食べるんじゃ!」と、饅頭をぽーんと放り投げると、饅頭はお父ちゃんの頭にあたって、ころころと畳に転がりました。お母ちゃんも子供も真似をして、饅頭をぽーん、ころころ……。結局、親子はその夜何にも食べずに床につきました。

次の日、親子は空腹のまま旅を続け、途中の茶店で饅頭を食べる侍を見かけました。侍の食べ方を真似して、親子はやっと饅頭を食べることができました。

さて、その日の宿では、名物として「首巻き素麺」が出されました。親子はまた食べ方が分かりませんでした。すると「こうやって食べるんじゃ!」と、お父ちゃんが首巻き素麺を首に巻きつけて食べ始めました。お母ちゃんも子供もそれを真似してみましたが、素麺が喉に詰まって食べられません。親子は素麺を食べるのを止め、早々に寝ることにしました。

さて布団を敷こうとすると、布団と一緒に六枚折りの「屏風」が出てきました。「これは立てて絵を見るもんなんじゃ!」と早速お父ちゃんが屏風を立てようとしましたが、立て方が分からず、屏風はすぐに倒れてしまいます。とうとう親子は、屏風が倒れないよう朝まで押さえておくことにしました。翌朝、親子は一睡もしないまま宿を出発しました。

分からないことは見栄を張らずに素直に聞けば、旅もまた楽しいものなのに……。

結局この親子、見栄を張り過ぎて旅を楽しむことができず「何でこんな目にあわなければならんのじゃ。まあ、もう来んぞぃ。投げまき饅頭、首巻き素麺、六枚屏風の立てかやし!」と、お伊勢参りを中止して、ぷりぷり怒りながら阿波の山奥へ帰って行ったそうです。

(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-7-5 6:50)


ナレーション市原悦子
出典湯浅良幸(未来社刊)より
出典詳細阿波の民話 第一集(日本の民話08),湯浅良幸、緒方啓郎,未来社,1958年06月15日,原題「世間知らずの伊勢参り」,採録地「勝浦郡」,話者「傍示イソノ」
場所について勝浦郡上勝町(地図は適当)
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地図:勝浦郡上勝町(地図は適当)
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※掲載情報は 2012/7/5 9:55 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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猫  投稿日時 2021/4/5 14:18
見栄を張らずに素直に聞けば、旅もまた楽しいものなのです。・・・この言葉、印象的です。
自分がわからないことを質問することは、勇気がいることですが、それによって自分の世界も広がるし、質問された方も決して嫌な気持ちはしないですからね。こういう教訓は非常に大切だと思います。このような教えはあまり昔ばなしでもないので貴重ですね。

このお話に登場する男の子(子供)が小原秀一さんらしい独特な雰囲気を出していてなんとも好きでした(笑)
そうめんを首に巻くシーンはまさに、「よい子は真似しないでね」の案件ですね。
Perenna  投稿日時 2019/5/11 21:43
この昔話って、ひょっとしたら馬鹿婿さんの話なのではないですか?
大正11年に出版された「日本童話宝来集・下巻」には、「馬鹿婿 首まきざうめん」という題で似たような昔話が紹介されています。(コマ番号241/324)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945588/241

お嫁さんの実家を訪問した馬鹿婿さんが、初めて見たまんじゅうを天井に投げ上げて口で受けて食べたり、そうめんを首に巻きつけたり、屏風の立て方がわからないので、一晩中手で持っていて眠れなかったという話です。
最後のオチでは、
「首巻きざうめん、投げまんぢゆう、
ひつぱり屏風で夜が明けた、
おおもしろや、おもしろや。」
という歌で終わっています。
徳島県勝浦郡上勝町に伝わる昔話との関係が気になるところですね。
araya  投稿日時 2011/11/29 5:21
『阿波の民話』(湯浅良幸,未来社)に「勝浦郡上勝町」での採録とありますので、徳島県勝浦郡上勝町の町役場を仮でポインティングしています。

http://g.co/maps/9jsz6

ちなみに、親子三人で最後に披露した雑徭の詞は下記の通り。

まあもう来んぞ
投げまき饅頭
首巻き素麺
六枚屏風の立てかやし
まあもう来んぞい

最初の旅館で「当家の名物饅頭です」としか言ってないのに、何故、投げあげて食おうとしたのか不思議やったんですが、原作を読んで納得しましたわ(^Д^)。
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