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No.1345
きぬぬまのはたおりひめ
鬼怒沼の機織姫
高ヒット
放送回:0853-A  放送日:1992年07月25日(平成04年07月25日)
演出:小林治  文芸:沖島勲  美術:千葉秀雄  作画:大森幸夫
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あらすじ

弥十(やじゅう)という若者が姉の家に届け物をした帰り、道に迷って鬼怒沼にたどり着いてしまう。鬼怒沼の素晴らしい景色に見とれているうちに弥十は疲れて眠ってしまった。

しばらくして弥十が目を覚ますと、近くで美しい娘が機を織っているのに気づいた。「鬼怒沼には機織姫がいて、機を織るのを邪魔すると恐ろしい祟(たたり)がある」という言い伝えを思い出した弥十は、一度は隠れるものの機織姫の美しさに見惚れて近づいて彼女に触れ、機織姫が機を織るのを邪魔してしまう。

機織姫は弥十を突き飛ばし怪我をさせる。怒り心頭の機織姫に我に返った弥十は、祟りのことを思い出し血相を変えて逃げ出した。しかし、機織姫は弥十を許さず、杼(ひ)をなげて村に逃げ帰った弥十を捕まえ、糸を手繰り寄せて引きずって鬼怒沼へ連れ戻す。

殺されると思った弥十は反撃に出て、機織姫を杼で突き刺した。弥十は顔面蒼白・血と泥で汚れたぼろぼろの姿ながら、素晴らしい細工の杼を持って村へ帰ってきた。鬼怒沼の美しい沼には機織姫が住んでいて、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟がある。

(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-6-14 23:58 )

※杼:機織り道具。糸が巻かれていて先端が尖っている。


参考URL(1)
http://home.f07.itscom.net/rainbow/kinutyujodensetu.html
ナレーション常田富士男
出典栃木の伝説(角川書店刊)より
出典詳細栃木の伝説(日本の伝説44),安西篤子,角川書店,1980年3年20日,原題「鬼怒沼の機織姫」
場所について鬼怒沼
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地図:鬼怒沼
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※掲載情報は 2012/6/15 2:00 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
10件表示 (全40件)
マルコ  投稿日時 2013/9/10 18:14
鬼怒沼の機織姫 日本の伝説44「栃木の伝説」より(安西篤子著)

 弥十は十七、川俣に住むいきのいい若ものである。
 よく晴れた初夏のある朝、弥十は母親から用事を頼まれた。日光沢へ嫁に行っている姉のところで、先日、赤ん坊が生まれた。祝いに餅をついたので、届けてやってくれというのである。 弥十はこころよく承知して、さっそく餅の包みを背負い、家を出た。
 山道をせっせと登ると、汗ばむほどである。ブナも白樺も楓も水楢も青々と繁って、その上をやわらかい風が渡る。駒鳥がしきりにさえずっている。草いきれでむせるようだ。鬼怒川の渓流が足もとを涼しげに流れて行く。
 昼ごろに姉の家に着くと、姉も姉婿もたいそう喜んで、昼飯を食わしてくれた。
 飯を済ませ、一休みして、弥十は姉の家を出た。
 こんどは荷がないので、足も軽い。弥十はとぶように道を急いだ。
 しかし、途中でふと立ち留った。もう、とっくに、下りにかかっていなければならないのに、道はなお山を登って行く。どうやら途中で、わきへ迷いこんでしまったらしい。
 「まあ、いいや、まだ日は高い。そのうちに道がみつかるだろう」
 川俣で生まれ育って、このあたりの地形を知り抜いている弥十は、べつに不安も感じなかった。
 登っていくうちに、しだいに視界が開けた。それは、弥十も初めてみる風景だった。
 ひろびろとした台地に、大きいの小さいの、幾十ともなく沼が点在する。しかも、いまは夏のはじめのことで、可憐な花が咲き乱れていた。
 岩の間に群れ咲く、玉子の黄味みたいな花は岩車、羞じらう乙女のようにうつむいて咲く淡紅花は姫石楠花、釣鐘の形の岩鏡、見渡す限り、咲き競い、甘い匂いはあたりに満ち満ちて、弥十は思わず五体が痺れた。
 「なんといい匂いだ。なんと美しい風景だ。この世の極楽とは、こういうところを言うのではあるまいか」
 子供の頃から弥十は、鬼怒沼の話を聞かされていた高くそびえる鬼怒沼山の上には、たくさんの沼がある。そこには春から夏にかけて、きれいな花が咲いて、人を夢見心地に誘いこむ。しかし、鬼怒沼には、妖しいことがいろいろある。
 むかし、沼に大蛇が住んでいた。あるとき、腕のいい猟師がこれを撃ち殺したために大洪水が起こり、麓の村々はたいそう迷惑を蒙った。
 それからまた、沼には機織姫が住んでいる。姫が機を織ろうとしているとき、うっかり覗き見すると、おそろしい祟りがある。
 弥十はこうした言い伝えをたくさん聞かされ、「だから、鬼怒沼へは、近寄ってはなんねえぞ」と、きつくいましめられていた。
 「ここは、きっと、鬼怒沼なのだ」
 心のうちで弥十は呟いた。が、少しもおそろしいとは思わなかった。花の甘い香に酔い、それに歩き疲れてもいたので、岩の上にごろりと横になった。岩は日に照らされて、ほどよくあたたまっている。弥十はいつか、うとうとと眠りこんでしまった。
 日が翳って、うそ寒くなったのか、弥十はふと眼をさました。びっくりしてあたりを見回した。
 「そうか、おらはここで眠ってしまったんだな」
 その弥十の眼が、沼の上にいるあるものを捉えた。光りかがやくような美しい女である。黒髪は肩を越えて背になびき、身には水色の羅(うすもの)をまとっている。遠目のよく利く弥十は、羅の下のもり上がった乳房や、まるみを帯びた白い尻まで、すっかりみてとってしまった。
 女はなにか歌を歌いながら、楽しげに機を織っていた。
 トン、カラリ、トントン、カラリ
 女の白い手が機の上をす早くかすめたと思うと、梭(ひ)が走り、筬(おさ)が動いた。
 弥十は呆然と見惚れていた。
 「天女さまだ、天女さまだ」
 乾いた唇をなめなめ、夢中で呟いた。
 ふっと、女の手がとまった。女は顔をあげて弥十を見た。たちまち女の顔に、怒りの色が走った。おそろしい眼をして弥十を睨んだかと思うと、さっと立ち上がった。
 女の手から、空を切って、梭がとんできた。狙いはあやまたず、弥十は額をわられた。どっと血が溢れた。気がついたときには、もう、女の姿はどこにも見えなかった。
 弥十がぼんやりと家へ戻ってきたのは、その日も暮れ切った時分だった。どこをどう歩いてきたのか、弥十の麻単衣はあちこち裂け、顔も手足も血と泥にまみれ、履物もなかった。それでいながら、どこで拾ったのか、飴色のみごとな梭を一つ、しっかりと握りしめていた。
 あれほどいきのいい若ものだった弥十が、その日を境に、すっかり腑抜けになってしまった。眼はうつろで、ものも言わず、時折、口の中でなにか呟くばかりである。
 ・・・あれは、鬼怒沼のほとりへ迷いこんで、機織姫を見たにちがいない。
 村人はおそろしそうに噂した。
 弥十はそれからまもなく、痩せ衰えて死んでしまった。
ゲスト  投稿日時 2013/5/11 19:36
鬼怒沼は、鬼怒沼山の山頂近くにある湿原で、その標高は2,000メートルに達し、高層湿原としては日本一の高所にあるといわれているそうです。

秘境らしい幽玄のたたずまいを見せる鬼怒沼には、ヒメシャクナゲ、チングルマなど100種類を越える高山植物や、ルリボシヤンマ、オゼイトトンボなどの貴重なトンボ類が生息している。


東武鉄道鬼怒川温泉駅→市営バス女夫渕温泉行き(1日4本)で1時間35分、バス停:女夫渕温泉下車、徒歩4時間
日光宇都宮道路今市ICから国道121号、県道23号経由1時間30分
もみじ  投稿日時 2012/6/16 23:45
マルコさん
地元の方にそう言っていただけると嬉しいです。

もみじは、滋賀県出身です。
日本昔話の滋賀県はやはり琵琶湖関連が多いです。(^^;)

マルコさんのお話のとおり、
やはり実際に鬼怒沼山へ登るのが困難ということは

機織りは、「景色がかくも素晴らしい」という比喩で
機織姫が恐ろしいのは、
その景色を見るために沼にたどり着くのが非常に困難で危険なため
気安く登ろうと考えないようにとの戒めなのだろうなと思います。

お話の「春から夏にかけて」とか季節が限定してある点も
夏だからと軽装で登山して遭難して凍死する事故が今現在も各地であることを考えると
それが「うっかり覗くと祟りがある=気楽に登ろうと考えると事故に遭う」ということなのかな、と(・ω・)

なので鬼怒沼山に行く時は、やはり機織姫(山の天気)に要注意ですね(^^)


マルコ  投稿日時 2012/6/16 20:15
もみじさんが「鬼怒沼の機織姫」のあらすじを書き込んでくれて嬉しいです。
「鬼怒沼の機織姫」のお話はマルコの住んでいる栃木県のお話なので 他の県の方が興味を持ってくれるのは嬉しいですね。マルコもいつか鬼怒沼に行ってみたいと思っているのですが なかなか良い機会に恵まれなくって・・・。
行くとしたら春から夏でしょうね・・・登山好きの父であるマルオの話だと真夏の間でないと雪に閉ざされて行けなかったり、栃木県から鬼怒沼まで行くのには川に沿って歩いて行かなければならないので川の水量が多くない時期でないと危険だそうです。
まぁ機織姫は出てこないとは思いますが・・・鬼怒沼行くとしたら十分気をつけたほうがいいでしょうね。
beniko  投稿日時 2012/6/16 2:51
もみじさん、返答ありがとうございました。あらすじ文章の最後を再編集しました、ご確認ください。
いつかこのお話の完全版(尻切れしてない状態)に巡り合えればいいですね。
もみじ  投稿日時 2012/6/16 1:44
すみません、「鬼怒沼の機織姫」のあらすじを書き込んだ者です。
名前を記入するのを忘れておりました。失礼しました。

http://home.f07.itscom.net/rainbow/kinutyujodensetu.html

というサイトにて話の詳細を知ることができます。
栃木の鬼怒沼の機織姫の同伝説の話も記載されております。

私も、動画サイトで見たのですが同じく最後は切れてました(;´Д`)
書き込んだ時は確か主人公はその後死んでしまったはずだと思っていたのですが
もう一度調べたところ、元ネタでは主人公は亡くなってましたが
アニメではなんとか生きて帰った。というところで終わっていたようです。

私が記憶していたのは元ネタだったようです。
記憶違いから、間違ったことを書いてしまって申し訳ありません。

アニメのラストは弥十がふらふらになって杼を握りしめて帰ってきたあとに「鬼怒沼の美しい沼には機織姫が住んでいて、うっかりのぞき見すると恐ろしい祟がある。」というのを言うことで、主人公の男の「その後」にあえて触れずに終わっていました。

一応、子ども向けに機織姫を倒して命からがら生きて帰ったと終わらせたけれども、機織姫がまた機を織ってる姿を入れることで、ニュアンス的には元ネタのとおり、主人公の男は「正気を失って死んだ」「弥十がその後どうなったのかは誰も知らない」的な感じなのだろうとは思います。

長文失礼しましたm(..)m
beniko  投稿日時 2012/6/15 23:35
ゲストさんのあらすじ投稿を読みまして、質問があります。この「鬼怒沼の機織姫」は、ぶっちゃけ紅子は動画サイトにあった際に見たお話なんですが、ラストの部分数秒間切れていたアニメでした。主人公の男(弥十)は、最後には結局死んでしまうのですか?!
マルコビッチ  投稿日時 2012/2/21 13:56
えっと・・・。
このお話は「角川書店」の「日本の伝説44・栃木の伝説」から引用しました。
beniko  投稿日時 2011/8/28 17:25
鬼怒沼の場所が見つかりましたので、マッピングしました。ありがとうございました。
それにしても、この手の「過失はないのにとにかくタタる」という話は、理不尽ゆえに恐ろしいのー。
マルコビッチ  投稿日時 2011/8/28 10:00
たしか・・・鬼怒沼は日光のほう栃木・群馬・福島の三県県境近くに位置していますよ・・・。
それにしても・・・弥十さんはドスケベですね・・・。
でも・・・私が聞いたお話「鬼怒沼の機織姫」の中では機織姫が投げた機織の道具(糸が巻いてあって鋭いヤツ)が弥十の額に命中してどっと血が溢れて 気が付いた時には、もう、どこにも機織姫はいなかった。
その後は、昔ばなしと同じなのですが・・・放心状態で帰ってきた弥十は
それからまもなく、痩せ衰えて死んでしまったそうです・・・。
怖いお話ですよね・・・。
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