放送回 | No.0134(0082-A) |
放送日 | 1977年04月30日(昭和52年04月30日) |
出典 | (表記なし) |
クレジット | 演出:藤本四郎 文芸:境のぶひろ 美術:山守正一 作画:上口照人 |
ナレーション | 常田富士男 |
むかし、加賀の里に芋掘り藤五郎という男おって、そりゃあ貧乏で大酒のみでな、山に入っては芋を掘り、それを酒に換えて暮らしておった。
ある日、見たこともないような立派な嫁入り行列が、そんな芋掘り藤五郎の家にやって来た。藤五郎は吃驚仰天。なにしろ、芋掘りから帰って来てみると、美しい嫁様が座って藤五郎を待っておったのじゃから。
嫁様は大和の長者の娘のお琴と名乗り、観音様のお告げで藤五郎の所に嫁に来たと言って、頑として帰ろうとはしなかった。こうしてお琴と藤五郎は夫婦になった。お琴はたいした働き者じゃったが、もともとの貧乏暮しが二人になって、おまけに藤五郎はあいかわらずの酒好きで、暮らしはどうもこうもなりはせん。
そこでお琴は嫁入り道具の中から小判を出して、藤五郎にこれで米や必要な物を買うように勧めた。ところが藤五郎はその小判を村人に配って回り、僅かばかりの酒に換えてしもうた。実は、藤五郎は金や小判という物がこの世にあることを知らなかったのじゃ。山の芋を掘って、それを直接酒に換えるだけの暮らしじゃったでなあ。
お琴はそれを聞いて涙を流して悔しがったが、藤五郎は「あんな物、山に行けば芋にくっついてなんぼでもあるわ。」と言うたそうな。お琴は一旦は実家に帰ろうとしたが、思い直して、藤五郎にいつも芋を掘っている場所に連れて行ってもらった。そうして、そこの地面を掘ると、そりゃあたいそうな金がざくざくと土の中から出てきたそうな。
こうして、藤五郎とお琴は芋掘り長者と呼ばれる長者になり、末長くむつまじく暮らしたそうな。藤五郎はな、長者になっても山に入り、相変わらずの芋掘り名人ぶりじゃったそうじゃ。
それからな、藤五郎が金を洗った沢。これが縮まって金沢と呼ばれるようになったそうで、今の石川県金沢は、芋掘り長者の藤五郎が開いた町じゃということになるんかな。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2013-11-2 12:55)
地図:藤五郎夫妻の墓がある「伏見寺」(金沢市寺町5-5-28) |