放送回 | No.1313(0830-A) |
放送日 | 1992年02月08日(平成04年02月08日) |
出典 | 岩手の昔ばなし(三丘社刊)より |
クレジット | 演出:原田益次 文芸:沖島勲 美術:安藤ひろみ 作画:柏木郷子 |
ナレーション | 常田富士男 |
むかしむかし、「くせえ(狸のこと)」と「狐」は仲良しじゃった。じゃが、くせえは狡賢い狐に騙されて、いつも損な役回りばかりさせられておった。
例えばある時、くせえと狐は樵の弁当に目をつけ、くせえが娘に化けて樵を誘い出し、その間に狐が弁当を盗み出すことにした。ところが、くせえがあんまり臭いので化けの皮が剥がれてしまい、くせえは樵に追いかけられて散々な目にあった。その間に、狐は盗んだ弁当を一人で全部食べてしもうたそうな。
またある時は、二匹が交替で魚を獲って一緒に食べる約束で魚獲りに出かけたものの、結局は狐が魚を全部食べてしもうたこともあったそうな。こんなことが続いて、くせえはとうとう堪忍袋の緒が切れてしもうた。
そこである冬の日、くせえは仕返しに狐を騙すことにした。くせえは狐に「寒い夜に一晩中淵に尻尾を垂らしておけば、冬中食べるほどたくさんの魚が尻尾にくっついて獲れる」という話を吹き込み、欲張りな狐はすっかり騙されたそうな。
そうして狐はうんと寒い夜に一人で淵に出かけ、冷たい水に尻尾を垂らした。一方、それを見たくせえは、淵の川上で凍った氷を砕いて淵の方へ流しはじめた。氷は淵に流れて、どんどん狐の尻尾にくっついた。狐はそれを魚が尻尾に喰いついたのと勘違いして、大喜びで、一晩中尻尾を垂らしたまま冷たいのを我慢しておった。
やがて夜も明け、狐は立ち上がろうとした。ところが、尻尾の先には大岩ほどある氷の塊がくっついておるのじゃから、重くて痛くて立ち上がれない。狐は大慌てで尻尾を引き抜こうとしたが、氷が重すぎてとうとう淵に落ちてしもうたという。
こうして、散々くせえを騙してばかりおった狐は命からがら逃げかえったが、自慢の尻尾は毛が抜け、皮も剥がれて、見るも無残な様子じゃったそうな。まあ、あんまり調子に乗って人を騙してばかりいると、こういうことになるということじゃ。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/9/8 9:43)