放送回 | No.1306(0825-A) |
放送日 | 1991年12月14日(平成03年12月14日) |
出典 | 早船ちよ(鎌倉書房刊)より |
クレジット | 演出:児玉喬夫 文芸:沖島勲 美術:渡辺由美 作画:野村誠司 |
ナレーション | 常田富士男 |
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昔、ある田舎で子供たちが凧揚げをしようとした。ところが風が全く吹かないので、いくら走っても凧が揚がらなかった。そこで子供たちは風が吹きそうな丘へ登ることにしたが、丘の上には大きなおっさまが座っていて、子供たちは驚いた。
おっさまは「凧揚げに来たのか?お前ら風に乗って空を飛んで凧になれ。空を飛んでいくと、冬でも柿や梨がたんとなっている山があるが行くか?」と訊くので、子供たちはおっさまの誘いに乗った。
子供たちはおっさまの帯に跨ると、おっさまは大きな翼を広げ風に乗って飛び発った。しばらくすると饅頭みたいな山に着いたが、そこには柿や梨、栗が沢山なっていた。子供たちが柿や梨を夢中になって食べているうちに夕方になってしまった。
するとおっさまは、「ちょっと用事を思い出した」と言って子供たちを山に置き去りにし風に乗って飛び発ってしまった。困った子供たちはおっさまのことを呼んだり、村へ帰りたいと叫んだが、おっさまは帰って来なかった。
そのうち日も暮れてしまい一番星が光る頃、子供たちは仕方なく手をつないで山を下りることにした。すると子供たちの視線の先に灯りが見えた。その灯りは大きな木のほこらから出ていて、子供たちはおそるおそる中を覗くと、そこには大きな婆さまが座っていた。
「お前たち、どこから来た?」と婆さまが聞くので、子供たちは婆さまに訳を話した。話を聞いた婆さまは子供たちをほこらの中に入れると、大きなおっさまは、のんびり屋で気まぐれな息子の南風だと話して聞かせた。そして子供たちに豆腐汁を振る舞い、身体が温まったころ、婆さまはもうひとりの息子の北風を呼び子供たちを村へ送るよう頼んだ。
子供たちは北風の背中に乗り村へ飛んで帰った。
一方、村では子供たちが暗くなっても帰って来ないので大騒ぎになっていたが、子供たちの無事な姿を見て皆安心した。そして子供たちは親たちに南風と北風のことを話して聞かせた。その晩はどこの家でも一足先に正月が来たかのように、いつまでも賑やかだったそうだ。
(投稿者:Kotono Rena 投稿日時 2014/11/26 21:27)