昔、ある村にたいへん仲の悪い嫁と姑がいました。姑は村人に嫁の愚痴ばかりこぼし、嫁は和尚さんに泣き言ばかり言っていました。
ある日の事、あんまり姑のいびりがヒドイので、嫁は和尚さんにお願いして毒を作ってもらいました。嫁は和尚さんに言われた通り、三度三度の飯に毒を混ぜて、姑が弱って死ぬのを待っていました。しかし、予定の七日間たっても姑はピンピンしています。それどころか、最近はとても優しく嫁に接してくれるようになりました。
なかなか毒が効かないので、嫁はもう一度和尚さんから毒を作ってもらって、さらに延長して毒を盛り続けました。しばらくたったある日、姑は「最近のお前は素直に言う事を聞いてくれるから私は嬉しいよ」と言って、こっそり買ってきた反物をプレゼントしてくれました。
嫁は大慌てで和尚さんのところへ行って、こんなに優しい姑を殺そうとした自分の恐ろしさを心から詫びました。しかし、和尚さんがくれた薬は毒ではなくただの葛粉でした。和尚さんは、人から優しくされたいならまずは人に優しくしなさい、と大泣きしている嫁を諭しました。
その後の嫁と姑はお互いにいたわり合いながら、末永く仲良く暮らしたそうです。
(紅子 2011-12-7 1:05)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第一集(日本の民話29),松岡利夫,未来社,1960年09月14日,原題「葛粉薬」,採録地「阿武郡」,話者「沢村通助、時岡春市」 |
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