放送回 | No.1295(0819-A) |
放送日 | 1991年11月02日(平成03年11月02日) |
出典 | 佐渡の伝説(角川書店刊)より |
クレジット | 演出:児玉喬夫 文芸:沖島勲 美術:児玉喬夫 作画:江口摩吏介 |
ナレーション | 市原悦子 |
むかしむかし、ある村に貧乏だが仲の良い夫婦が住んでおりました。ある日、女房は山へ山菜を採りに出かけ、山奥の黒池の近くまで来てしまいました。
すると突然風が吹いてきて、池のほとりに白い馬が現れました。馬はすぐにどこかへ走り去っていき、つづいて黒池の表面がざわざわと波立ち始めたかと思うと、二匹の大蛇が絡み合うようにして水底から浮かんできました。
女房が驚いていると、不思議な格好をした若い男と女が現れて、自分達は黒池に住む雄蛇と青池にすむ雌蛇で、時々白い馬に乗って行き来し、逢瀬を楽しんでいるのだと言うのです。
二匹の大蛇はこのことを誰にも言わないことと引き換えに、一粒の米を鍋に入れてかき回せば、それが一升のご飯になるという「宝のしゃもじ」を女房に渡しました。ただし、しゃもじを使っているところを誰にも見られてはいけません。そうして、男と女と白い馬は風のように消えてしまいました。
女房は家に戻って、それからは毎日しゃもじで一粒の米を鍋一杯のご飯に変えて夕食に出し、亭主を喜ばせました。そうして、このことは亭主にも言わず、しゃもじはそっと隠しておいたのでした。
一方、亭主の方はだんだん不思議になってきました。貧しい暮らしの中、こんなに毎日ご飯が食べられる訳がないのです。そこである日、亭主は女房を問いただしたのでした。女房は困って誤魔化しましたが、亭主は納得できません。
そこで亭主は次の日、出かけたふりをしてこっそり家に戻り、女房がしゃもじを使うところを覗き見てしまったのです。亭主は驚き怒って、女房からしゃもじを取り上げて家の外に投げ捨てました。すると急に強い風が吹き始め、白い馬がゆっくりと二人の家から遠ざかっていきました。
その後、女房は亭主に隠し事をしていたことを謝り本当のことを話しました。亭主もまた、疑ったことを女房を謝りました。それから二人はまた、貧乏だが仲の良い夫婦に戻ったということです。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/5/25 19:39)
地図:赤玉の奥にある杉池(地図は適当) |