昔あるところにノミどんがおった。ノミどんは京に行きたくて、頭の中には京のことが浮かんでは消え、消えては浮かんでを繰り返しておった。ある日とうとう、ノミどんは京参りをすることにした。しかし一人では心もとないので、シラミどんを誘うことにした。
シラミどんは、自分は足が遅いので、京参りには行けないと誘いを断った。しかしノミどんが「決して置いてきぼりにしない」というので、シラミどんも京参りに行くこととした。
気が付くと、多くの虫の仲間たちがノミどんとシラミどんのやり取りを見ていた。ノミどんは「おらは決して、約束を破ったりしない」と仲間たちにも言った。そして多くの虫の仲間たちに見送られながら、ノミどんとシラミどんは京参りに出発した。
ノミどんがぴょんと飛ぶと、シラミどんがそれに向かって歩く。ノミどんはシラミどんが追いつくのを待って、またぴょんと飛ぶのであった。しかしなかなか進まないことに、ノミどんはイライラするようになってきた。ある日とうとうシラミどんの足の遅さに、ノミどんは癇癪を起こしてしまい、「村に帰れ」と言ってしまった。シラミどんも「おらは最初断ったのに、おまえが無理に連れだしたんではねぇか。約束が違う」と、言って大ゲンカになってしまった。
しかたがないので、奉行所にて二人はお裁きを受けることになった。お奉行様はノミどんに対して、「約束を破るのはよくない。シラミどんを京まで連れて行くように」という裁きを下した。シラミどんは大喜びしたが、ノミどんは面白くない。ノミどんはシラミどんの上に乗っかり気絶させると、そのまま京へ一人で向かってしまった。シラミどんは体がひらべったくなってしまい、やっとの思いで村へ帰って行った。
それからしばらく経って、ノミどんは京みやげを下げて、京から帰ってきた。しかし、そこには約束を破ったノミどんを厳しい目で見つめる虫の仲間たちがいた。あまりの恥ずかしさにノミどんは体中が赤くなってしまった。この時からノミは体が赤くなり、シラミは体がひらべったくなってしまったということである。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/11/6 22:26)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
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