昔、和歌山の小倉村に、たいそう偉いお坊さんと小僧さんが住んでいました。お坊さんと小僧さんは、修行をしたり田んぼを耕したりして過ごしていました。
ちょうど田植えが終わった頃、田んぼのカエルたちの大合唱がはじまりました。和尚さんたちが住む庵(いおり)は、田んぼに囲まれた場所にあるので、それはもう大変な騒音でした。当初は、和尚さんも「鳴くのもカエルの仕事だから」と我慢していましたが、今年は鳴き声の規模が大きすぎました。
ある晩、和尚さんは田んぼにいるカエルたちに「もう少し静かにしてもらえるか?」と、相談しました。するとカエルたちは「自分たちも人間のように二本足で歩けるようにしてくれたら、鳴くのをやめても良い」と、和尚さんに言いました。
和尚さんは少々考えましたが、念力パワーを使ってカエルたちの望む通りにしてあげました。二本足で歩けるようになったカエルたちは、大喜びして「これからは鳴かない」と約束しました。
ところが、二本足で立ち上がったカエルの目は、ちょうど真後ろをみる格好になってしまい、まともに前に歩くことができなくなりました。とても不自由になったカエルたちは「やっぱり元の格好に戻してほしい」と和尚さんにお願いしました。
和尚さんの念力で、無事カエルたちは元に格好に戻りましたが、和尚さんとの約束は残ってしまいました。こうして小倉のカエルは鳴きたい時に、キュッとも鳴く事ができなくなりました。
このことから、和歌山の小倉あたりでは、肝心な時に何も言えない人の事を「あいつは小倉のかわずだ」と言うようになったそうです。
(紅子 2013-7-26 1:34)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 和歌山県 |
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