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No.1251
まじんのかたなかじ
魔神の刀かじ
高ヒット
放送回:0790-B  放送日:1991年03月30日(平成03年03月30日)
演出:小林治  文芸:沖島勲  美術:千葉秀雄  作画:山崎隆
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夜中の一番鶏で婿になり損ねた魔神の話

昔、越中の白萩という所に大変裕福で腕も立つ鍛冶屋が住んでいた。この鍛冶屋には大事に育て上げた綺麗な娘がおり、娘が年頃になると鍛冶屋はどこかに良い婿はいないかと娘に相応しい男を探したが、中々良い相手は見つからなかった。

そこで鍛冶屋はやはり家業の刀鍛冶を継いでくれるのが良いと考え、「一晩で千本の槍を鍛えた者を婿に迎える」という看板を立てたが、あまりの無理難題に志願 する者は誰もいなかった。しかし近くの山に住む魔神がこれを見てあの美しい娘の婿になろうと思い、颯爽と山を駆け下りると若い男に姿を変え、娘の婿になり たいと鍛冶屋に申し込んだ。

鍛冶屋は明日の朝までに千本間違いなく槍を鍛え上げれば娘の婿にする事を伝え、男は早速仕事場に閉じ籠ると一 心不乱に槍を鍛え始めた。ところが夜中になって仕事場からふいごや金床の音が聞こえてこなくなり、不思議に思った鍛冶屋がそっと仕事場を覗いてみると、なんと魔神に戻った男が凄まじい炎を吐きながら鉄の棒を口に咥えて切っては曲げを繰り返し、槍を瞬く間にこしらえていたのである。

魔神の側にある槍の山を見て鍛冶屋は、この勢いでは夜明けまでに千本は必ずできあがるだろうと悟り、約束通り魔神が娘の婿になる事を恐れた。鍛冶屋は今すぐ 魔神の仕事を止めさせようと一番鶏が留まっている竹竿に湯を流し込み、足下を温め一番鶏を早く起こし鳴き声を上げさせた。

この時魔神は最 後の一本を鍛え終えようとしていたが、一番鶏の鳴き声を聞くや否やもう夜が明けてしまったと慌てて仕事場を飛び出し一目散に山へ逃げ帰った。しかし辺りを見るとまだ夜中である事に気付き、一杯食わされたと知った魔神は酷く悔しがったがどうすることもできなかった。

この魔神が残した999本の槍の穂先はいずれも見事な出来栄えで、鍛冶屋も舌を巻くほどであったというが、その後鍛冶屋の娘は何故か婿を取らず、父親が死んだ後もずっと一人で暮らしたという。

(投稿者: お伽切草  投稿日時 2013-1-15 1:55)


ナレーション市原悦子
出典石崎直義(未来社刊)より
出典詳細越中の民話 第二集(日本の民話55),石崎直義,未来社,1974年09月30日,原題「魔神が作りそこなった千本槍」,採録地「下新川郡入善町」,話者「奥田新作」
場所について越中の白萩(地図は適当)
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地図:越中の白萩(地図は適当)
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※掲載情報は 2013/1/15 9:05 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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ゲスト  投稿日時 2019/2/9 20:25
竜が十日で十本に挑戦したという話を古い漫画で見たな
地元民  投稿日時 2018/12/1 20:29
この話は富山県上市町の伝記「稗田の鬼」が大元だと思われます。
『越中の民話』では下新川郡となっているようですが、上市町は中新川郡ですね。
白萩というのは上市町になる前にあった村の名前ですが、そのときの白萩村に稗田は含まれていません。そう離れているわけでもないので、もしかしたら大昔は稗田も白萩という土地の一部とされていたのかもしれません。
参考:https://www.town.kamiichi.toyama.jp/hp/legend/leg04.html
頭方  投稿日時 2018/11/30 10:11
下唇おじさん、刀鍛冶役で登場。この作品は、恐らく鬼の刀かじのリメイクだと思う。
ゲスト  投稿日時 2017/5/7 21:53
やっぱり舞台は上市町でいいんですね
自分が住んでるところが昔白萩村だったので
ゲスト  投稿日時 2016/1/25 21:12
この話では魔神でしたがまたは鬼が挑戦した話も残っているそうです。
ゲスト  投稿日時 2015/11/8 21:07
娘を無理に攫おうとせず、
無理難題に真っ向から取り組み、
しかも仕上げた仕事は、いい仕事…。

いやいや、普通にいい婿さんになりそうですよ!
まあ、ある程度妥協しないと結婚相手は見つからないということですかね…?
araya  投稿日時 2013/1/17 17:43
結婚したくない、結婚させたくない。物語の中では語られてない面ですが、
もしかしたら、そんな反社会的な願望があったのかもしれないと考えると、
驕りとは言い切れないのかもしれませんね(^_^)。

それでも、人の世にそぐわぬ願望を持つと、人の世ならざる者との婚姻を
余儀なくされるといった点は共通しますが…。自業自得とか因果応報とか
そういった教訓もあるのではないでしょうか。
もみじ  投稿日時 2013/1/17 13:27
魔人の刀かじにしても、食わず女房にしてもそうですが、
「飯を食べない嫁」「一晩で千本の槍を作る婿」などという条件は
どうやっても、人間にはできないことです。
そんな条件をつけることは「驕り」以外のなにものでもないです。

そして、あまりに無理難題すぎると、やってくる相手を「人間以外で」とこちらから指定しているようなものです。
また、それらが「できる」と言ってやってきた相手を「人間ではない」と疑問を持たないことも「愚か」なことです。

これらの無理難題条件は「暗黙のタブー」なのだと民話関係の本に説明がありました。
その驕りと愚かさを戒めるためのお話だそうです。

娘が最終的に独身を貫いてしまったのは、父親の驕りに対する反省なのか
それ以降、やってくる相手が「人外ではないか」と疑わなくてはならなくなったか…
魔人の仕返しを恐れたか……
人間、真面目に働く相手を選ぶのが懸命ってことで(´Д`;)
くるみ  投稿日時 2012/9/6 23:05
魔神もかわいいですよね(*^_^*)
素直すぎる^_^;

娘さん、キュートです♪
araya  投稿日時 2011/12/5 20:27
『越中の民話』(石崎直義,未来社)を確認。富山県下新川郡での採録で、本来の題名は「魔神が作りそこなった千本槍」でした。舞台は白萩村とのことで、位置的には中新川郡上市町早月川上流とのことですが、村と言える集落はないので、白萩発電所を少し行ったところにある富山県中新川郡上市町伊折の剱岳青少年旅行村にポインティングしました。

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