昔、山奥の村の小さな寺に、おのぶという少女がいた。
おのぶが七歳の頃、いつものようにおのぶは山で薪を拾っていたが、夜でもないのに急に辺りが暗くなった。おのぶが気味悪がっていると闇の中から、一匹の鬼が姿を現した。鬼はおのぶに脅しをかけるが、おのぶの方は怖がる様子は少しも見せなかった。
そんなおのぶの態度に鬼は感心し、「わしの持っているこの力をくれてやろう」と言って、握り拳をおのぶの前に出した。おのぶが両手で握り拳を握ると、鬼の力がおのぶに伝わり背丈は伸び、両腕は太くなり力こぶが出来ていた。
この出来事をさかいに、おのぶは百人力になりました。おのぶは、大きくて重たい洗濯石を軽々と持ち上げられるようになった。
ある日のこと、おのぶが川で洗濯をしていると、彼女の噂を聞きつけたひとりの侍が「力比べをしないか」と言ってきた。おのぶは「この洗濯石を持ち上げておくれ」と言ったが、侍は洗濯石を持ち上げられなかった。
今度は侍が「洗濯物を絞る勝負をしよう」と言うので、侍が大きな布を力一杯絞るが、絞りきることは出来なかった。対するおのぶは、あっという間に布を絞り切り、水は一滴も出なくなった。
しかしこの侍は、実は山賊の親分だったため、数日後仲間を引き連れ、おのぶのところに仕返しにやってきた。おのぶは山賊めがけて薪を投げつけて、山賊たちを撃退した。
この出来事のおかげで、おのぶの事はますます有名になった。その後も、大きな洗濯石を担いで洗濯をしたりと寺で働き続けた。おのぶがいた寺には、今でも大きな洗濯石が残っていて、大人が三~四人がかりでも持ちあげることは出来ないそうだ。
(投稿者: Kotono Rena 投稿日時 2013-9-9 21:36)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | おのちゅうこう(未来社刊)より |
出典詳細 | 上州の民話 第一集(日本の民話20),小野忠孝,未来社,1959年06月30日,原題「鬼から貰った力」,採録地「利根郡」,話者「鶴淵螢光」 |
場所について | 清岸院 |
このお話の評価 | 8.00 (投票数 5) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧