ある所に大変怠け者の亭主と働き者の夫婦がいた。亭主が全く働かないので女房はいつもガミガミ怒鳴ってばかりだった。
ある日、亭主は隣街の縁日にでかけた。怠け亭主は神社の大黒様に「楽に暮らせるようにしてほしい」と頼んだ。すると大黒様が現れて、本来怠け者が嫌いだが、今日は縁日だから特別だと言って「打出の小槌」をくれた。願いを言って振ると願いが叶う小槌らしい。
それをもらった亭主は喜んで帰り道を歩いていた。途中でわらじがダメになったので、わらじ出てこいと言って小槌を振ってみた。すると向こうからわらじ売りがすっ飛んできてわらじを一つくれた。今度は、お腹が減ったのでおむすび出てこいと言って小槌を振ると、向こうからおむすび売りがすっ飛んできておむすびを一つくれた。亭主は大満足で帰り道を急いだ。
家に帰ってみると、女房がカンカンに怒って待っていた。こんな時間までどこをほっつき歩いていたのかと問いただされ、亭主は縁日に行って大黒様に何でも願いの叶う小槌をもらったと言った。しかし女房はそんなデタラメ信じられるかと怒りだし、2人は大げんかになった。
怒った亭主はお前なんぞ鼻くそになってしまえ!と言って女房を小槌で叩いた。すると男の言った通り女房はでかい鼻くそになってしまった。すると、小槌をくれた大黒様が現れ、女房を鼻くそにしてしまった時に福が逃げてしまい、その小槌はもう役に立たないと告げた。
亭主は泣いて後悔したが時すでに遅かった。しかし大黒様は帰り際、お前の今後の心掛けで女房は元に戻らんこともない、と告げて去っていった。それ以来、怠け者だった亭主は女房が本に戻る日を信じて一生懸命働いたそうだ。その後女房が元に戻ったかどうかはわからない。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 市原麟一郎(未来社刊)より |
出典詳細 | 土佐の民話 第一集(日本の民話53),市原麟一郎,未来社,1974年06月10日,原題「怠け亭主とガミガミ女房」,採録地「高知市」,話者「坂本寿」 |
場所について | 土佐の高知の朝倉村(地図は適当) |
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