放送回 | No.1233(0778-B) |
放送日 | 1991年01月05日(平成03年01月05日) |
出典 | 松本俊吉(未来社刊)より |
クレジット | 演出:辻伸一 文芸:沖島勲 美術:なかちか東 作画:辻伸一 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、奈良の橿原(かしはら)の地黄(じおう)という所に、惣五郎という爺さんが住んでいました。爺さんの田んぼは三反分もの広さがあり、三段御作と呼んでいました。
ようやく稲を植えおえた日の事、野井戸で手を洗っていると、一匹の子狐がおぼれ死んでいました。可哀そうに思った爺さんは、井戸から引き上げて自分の畑の隅に埋めてあげました。その夜、爺さんが寝ていると「三段御作みな引いた」と、誰やらの声がしました。
その時はあまり気にせしませんでしたが、翌朝、田んぼを見ると、稲がみな引っこ抜かれていました。村人たちには心当たりもなく、爺さんも犯人が分からず、ふと昨日埋めた子狐のところへ行ってみました。すると、墓は掘りかえされて子狐はいなくなっていました。
きっと狐の親が勘違いして稲を引っこ抜いたんだろう、と思った爺さんは、狐の居そうな森へ行き「あの子狐はおぼれ死んでいたのをワシが埋めたんだー」と、大声で言って回りました。するとその夜、狐たちが爺さんの田んぼにやってきて、伊勢音頭を歌いながら抜いた稲を拾いながら、田植えを始めました。
すっかり稲を元通りに植え戻した狐は、「爺さん、お田植え引いてすまなかった。三段御作また植えといた」と、謝りました。この年の三段御作の稲からは、いつもの年の三倍の米がとれたという事です。
(紅子 2012-1-19 23:10)
地図:奈良の橿原の地黄(地図は適当) |