No.1222
かにぶち
蟹淵

放送回:0772-B  放送日:1990年11月03日(平成02年11月03日)
演出:山田みちしろ  文芸:沖島勲  美術:海老沢一男  作画:山田みちしろ
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あらすじ

昔々、隠岐の島(おきのしま)は西郷町の中村に、三郎左右衛門という名の年を取った木こりの頭(かしら)がいた。ここ、道後地区の山林については島の誰よりも詳しかったが、そんな三郎左右衛門でさえも、まだ一か所だけ行ったことのない場所が島にあった。

そこは、大きく成長した杉の木に囲まれた淵だった。この淵には魔物が棲み、近づく者を淵に引き入れると言われていたため、誰一人としてこの淵に近づく者はいなかったのだ。

しかし、齢(よわい)六十を超えた三郎左右衛門の心の中に、あの淵周辺の見事な杉の木を自分の手で切りたいという思いが次第に強くなっていった。

そしてある日、遂に三郎左右衛門は淵へと向かった。そこで一本の杉の木に狙いを定め、斧を振りかざす。ところが、三郎左右衛門は誤って斧を淵へ落としてしまった。

すると、淵からは異様なうめき声が聞こえ、巨大な蟹のハサミが浮かび上がってきた。三郎左右衛門はこれを見て恐ろしくなり、淵から逃げ出そうとしたが、美しく澄んだ娘の声が三郎左右衛門を呼び止める。

三郎左右衛門が振り返ると、淵の水面には美しい娘が立っていた。娘はこの淵の主であったが、いつの頃からか大きな蟹がこの淵に棲みつき、娘は囚われの身になっていたのだと言う。ところが今、三郎左右衛門の斧が蟹の片方のハサミを切り落とし、蟹は弱っている。どうか自分を助けると思って、蟹を倒してほしいと、娘は三郎左右衛門に懇願するのだった。

三郎左右衛門は恐ろしくなり、一度は家に逃げ帰るも、囚われの身となっている娘の事を思うと不憫でならず、翌朝決意を固め再び淵へと向かった。三郎左右衛門が淵に入ると、巨大な蟹が目の前に立ちはだかった。ところが蟹は、ハサミが岩の間につかえ、もがいている様子だった。三郎左右衛門はこの隙を見逃さず、蟹のハサミを見事切り落とした。

数日後、安永川の河口にハサミのない巨大な蟹の死体が上がった。大蟹は退治され、村人は安心して淵の周りで木が切れるようになった。しかし、淵の周りだけは主に失礼が無いように杉の木が残された。そしてこの時以来、この淵は蟹淵と呼ばれるようになったそうだ。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2013-11-30 18:53)


参考URL(1)
http://kanna-h.sakura.ne.jp/fan/spot_map/shimane/hime/hime.html
参考URL(2)
http://www.rg-youkai.com/tales/ja/32_shimane/07_kanifuchi.html
ナレーション市原悦子
出典離島の伝説(角川書店刊)より
出典詳細離島の伝説(日本の伝説50),酒井董美,角川書店,1980年9年20日,原題「年老いた木樵りと魔蟹」
場所について隠岐の島町元屋(地図は適当)
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地図:隠岐の島町元屋(地図は適当)
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※掲載情報は 2013/11/30 18:53 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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昔ばなし大好き  投稿日時 2014/11/23 9:11
ふるさと再生では「木こりと化け蟹」として放映されました。
mitsuzakura  投稿日時 2011/12/11 9:33
「蟹淵」の出典は「離島の伝説 日本の伝説50」(福田清人・諸田森二/編, 角川書店, 1980)より「年老いた木樵りと魔蟹」(187-194P)です。アニメのタイトルが出典のタイトルと必ずしも一致しない例の一つと思われます。

安長川が元屋(がんや)川に合流する0.5キロメートル手前の深い淵がその蟹淵とされています。

「年老いた木樵りと魔蟹」の執筆者は酒井董美・元島根大学教授です。酒井教授の論文に

『隠岐島の伝説「蟹淵の主」を考える : 横地満治氏収録本と茶山儀一氏の語りの比較を中心に』
http://opac.ndl.go.jp/articleid/3461403/jpn
という論文がありますので紹介しておきます。
※利用者登録すれば遠隔複写サービスが利用可能です。

蟹淵の主(島根県隠岐郡隠岐の島町)
http://www.rg-youkai.com/tales/ja/32_shimane/07_kanifuchi.html
こちらのサイトでも紹介されています。
話者の方のお話だと、蟹淵は現存するようですが、砂防ダムの建設等もあって浅く小さくなってしまったそうです。

淵に斧を落としてしまったところ、その泉の神が現れたというモチーフはイソップ童話の「金の斧銀の斧」に由来するものでしょうか。「日本昔話大成」(角川書店)や「日本昔話通観」(同朋舎)などで調べれば類話が見つかるかと。

アニメは未確認ですが、出典のお話を読むと、ほのかな憧憬とでもいうのでしょうか、話者の方は幼い頃に会った年上の娘と安長姫を重ねているのではないか、そんな印象でした。
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