昔、新潟県能生(のう)の小泊(こどまり)という所に治助という漁師が住んでいた。小泊の人達は昔から半農半漁の生活であり、その日治助は朝早くから稲刈りに精を出し、昼過ぎには仲間達と網揚げに沖へ向かって舟を漕ぎだした。
ところが舟が沖に着くと、急に黒雲が広がり風が吹き始めた。漁師達は慌てて網を引き揚げ村に引き返すも、治助の網に大きな金目鯛(深海に生息する鯛とは別の魚)がかかり、涙を浮かべる金目鯛を哀れに思った治助はこれを海に逃がしている間に時化(しけ)に巻き込まれてしまう。
時化で網も櫓も飛ばされた治助は、この海の中で取り残されては生きて帰れまいと諦めていたが、どこからか治助を呼ぶ声がするので前方を見ると、大波の間に光が差し込み中から老人が白い岩に乗って現れた。老人は小泊の海の守り神である金目鯛を助けてくれたお礼がしたいと治助に言い、治助を舟ごと白い岩の上に引き揚げると光と共に消えていった。治助は目が眩み気を失うが、白い岩は治助の舟を荒れ狂う海から守るように立ち上がっていた。
治助が気付いた時には時化はもう止んでおり、流されたはずの櫓も網も元に戻っていた。そして白い岩は沈み始め、治助の舟を凪いだ海面に浮かべた。一方小泊の浜では夜通し待っても治助が帰ってこないため、治助の家族も仲間達も治助が海に飲まれて死んだと思い悲嘆していたが、遠くから治助の舟がやってくるのを見て浜の人達は皆歓声を上げ喜んだ。
帰ってきた治助が海で起きた一部始終を話すと、その大岩は「上り岩」で昔から海の神様が住む場所だと小泊の古老が言い、一同は海に両手を合わせ海の神様に感謝した。この上り岩は今でも小泊の海のどこかにあり、漁師達を守っていると言われている。
(投稿者: お伽切草 投稿日時 2012-11-22 0:00 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 新潟県 |
場所について | 新潟県能生小泊(地図は適当) |
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