放送回 | No.1133(0715-A) |
放送日 | 1989年09月09日(平成01年09月09日) |
出典 | 土橋里木「甲斐昔話集」より |
クレジット | 演出:小原秀一 文芸:沖島勲 美術:渡辺由美 作画:小原秀一 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔ある所に、風呂屋の夫婦と医者の夫婦が隣同士に住んでいました。
風呂屋は商売繁盛でしたが、医者の方はヤブ医者だったのでちっとも儲からず、暮らしぶりは貧しいものでした。
医者は隣の風呂屋がうらやましく、いつも何を食べているのか気になり、こっそり覗いてみました。医者の予想に反して、風呂屋の夕食はつつましく、その代りに金の恵比寿さまと大黒さまにたっぷりとご馳走をお供えしていました。
医者夫婦は、「風呂屋が儲かるのは、恵比寿と大黒のご利益に違いない」と思い、その晩のうちに恵比寿さまと大黒さまを盗み出しました。そして医者夫婦は、熱心に商売繁盛を祈願しました。
すると、医者の家に男が駆け込んできて「急病人がいるからすぐ来てくれ」と言いました。医者は「さっそくご利益があった」と、大喜びでカゴに乗り込み、行先も聞かず出発しました。
ところが、医者を乗せたカゴがある山にさしかかったとき、追いはぎに襲われてしまい、医者は身ぐるみ剥がされてしまいました。
怒った医者夫婦は、「福の神なんてとんでもない、粉々に砕いてしまおう」と、恵比寿さまと大黒さまに詰め寄りました。
すると、恵比寿さまと大黒さまが口をきいて、「ワシらは風呂屋の福の神だから、人を裸にするのが商売じゃ」と、笑って言いました。
(紅子 2014/4/3 2:28)