昔、加賀の国の三堂山いう山があった。この山の中で、道が三つに別れているもんでいつの間にか三道山と言うようになった。この山には年寄りのキツネ夫婦が住んでいて、山道を通る人をだましては食べ物を盗んでおった。
ある日、馬方の久兵衛(きゅうべえ)が、魚を積んで歩いていると、婆さんに化けた老ギツネが声をかけました。「馬方さん、その馬に乗せて寺井まで連れて行ってください。」
久兵衛は、キツネが化けているとわかっていたので、おばあさんを馬に乗せ「落ちるとあぶねーから」とナワでしばりあげました。そして、久兵衛の家まで来ると、おばあさんをハシゴにしばりつけ、杉の葉っぱに火をつけ煙りでいぶし始めました。
この様子を見ていた老ギツネの亭主は、急いで即得寺へ向かい、和尚の袈裟(けさ)を持ち出しました。キツネの亭主は、袈裟を身に着けた和尚さんに化け、久兵衛さんを諭し、どうにか婆さんギツネを助け出しました。
その後、キツネ夫婦は袈裟をお寺に返し、和尚さんに丁寧にお礼を言いました。やさしい和尚さんは、このキツネ夫婦たちをお寺の縁(えん)の下に住まわせてあげることにしました。
その晩、久兵衛の家から火が出ました。キツネ夫婦は急いで久兵衛さんの家に駆けつけて、必死になって火事を消し止めてあげました。久兵衛さんも村人たちも、消火してくれたキツネたちに感謝し、いつまでも仲良く暮らしたそうです。
(ちまこう 投稿日時 2013-6-2 21:08)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 石川の伝説(日本標準刊)より |
場所について | 即得寺 |
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