No.1106
ふかじぞう
フカ地蔵
高ヒット
放送回:0697-B  放送日:1989年05月06日(平成01年05月06日)
演出:辻伸一  文芸:沖島勲  美術:安藤ひろみ  作画:辻伸一
写真あり / 山口県 ) 25757hit
フカに化身したお地蔵様が、時化の海から救出してくれた話

昔、瀬戸内海の沖家室島(おきかむろじま)に一人の海女がいた。

この海女は、島の中でも一番よく働き、誰よりも多くアワビやサザエを取った。その上、漁師たちでさえ太刀打ち出来ないほどの男勝りだと評判だった。それと言うのも、この海女は時化(しけ)で漁師の夫を亡くし、女手一つで子供を育てて行かねばならなかったからだ。

そしてこの海女は、朝早くに起きて人知れず丘の上のお地蔵様にお参りしていた。「時化が来ませんように。海が穏やかでありますように」こうお祈りしてから漁に出るのが常だった。

そんなある年の夏の事、この年はどういう訳かアワビやサザエがさっぱり取れず、この海女も困っていた。そんな時、沖の磯へ行けば少しは取れるという話を漁師から聞き、海女はもう遅い時刻だというのに沖へ向かって舟を漕ぎ出した。

沖の磯に潜ってみれば、なるほどアワビやサザエがそこそこはあるようだ。こうして海女は時が経つのも忘れてアワビやサザエを取っていたが、いつの間にか風が強くなり、海は荒れだした。海女はやっとの思いで岩場にしがみつくが、潮が満ち始め、今やその岩も海に沈もうとしている。

その時、どこからともなく一匹のフカが現れ、海女のまわりを泳ぎはじめた。海女は、ここでむざむざ死ぬよりはと、思い切ってフカの背に飛び乗った。すると、フカはものすごい速さで泳ぎだし、海女は振り落とされそうになったので、思わずフカの背に貝をそぎ取るノミを突き刺した。

こうして海女は、なんとか浜に泳ぎ着き一命を取り留めた。体がよくなってから、海女はいつものように丘の上のお地蔵様の所へ向かう。するとどうだろう。お地蔵様は倒れており、その背中にはノミを刺された跡がある。海女はその時、沖に現れて自分を助けてくれたあのフカは、お地蔵様の化身だったのだと悟った。

それから海女は、以前にも増してお地蔵様にお参りするようになり、村人もこのお地蔵様をフカ地蔵と呼んで大切にしたそうだ。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-10-12 13:49)


ナレーション常田富士男
出典山口の伝説(日本標準刊)より
現地・関連お話に関する現地関連情報はこちら
場所についてフカ地蔵(泊清寺)
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地図:フカ地蔵(泊清寺)
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※掲載情報は 2012/10/12 13:49 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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アザヴ  投稿日時 2018/12/6 20:42
たしかこの話原作の本では、たった1ページ未満しか紹介されていなかったんだよなぁ…
夾竹桃  投稿日時 2018/7/12 6:08
ありがとうございます!
いつも楽しく拝見しております。
夾竹桃  投稿日時 2018/7/12 0:37 | 最終変更
もしよければ、あらすじに使ってください。よろしくお願いします。

フカに化身したお地蔵様が、時化の海から救出してくれた話
__
一行あらすじとして転載しました。ありがとうございました。(2018/7/12)
ゲスト  投稿日時 2015/10/22 15:37
沖家室の漁村集落 ~盆に沈む島 周防大島町~  他  (2011/12/22)
観光のためには、何もしていない。 そのまま。それでも、道の駅の本で、漁村集落として紹介してる。 こういうのは珍しい。
沖家室(おきかむろ)島の人口は、今は200人。 以前は、3千人もいた。 小さな島に、お盆には、どっと人が戻ってくる。 その様子を、人は、島が沈みそうになると言う。
家並みは、水産庁の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選ばれている。
沖家室島は、高齢化率が日本最高水準。
http://akkamui212.blog86.fc2.com/blog-entry-469.html


沖家室島の美しい写真が沢山載っています。
ゲスト  投稿日時 2015/10/22 15:22

鱶になった地蔵さん ~山口県沖家室島~
 瀬戸内海の沖家室島に善右衛門ちゅう漁師がおったげな。やさしい男で、泊清寺の地蔵さんにお参りを毎日しておった。善右衛門には女房がいたが、この女房には他に男がいて夫を殺しちゃろうと機会をうかがっていた。
 ある日、女房が沖の千貝の瀬へ貝採りに行こうと言ったげな。そこは満ち潮になると海ん中に沈んでしまうという不気味な瀬じゃったが、女房の頼みだからと舟を出すことにした。善右衛門が夢中で貝を採っているうちに女房が舟を漕いで瀬から離れ、善右衛門は置き去りにされてしもうた。やがて陽も落ち、潮はじりじりと満ちてきた。善右衛門は「南無地蔵大菩薩…」と日ごろ信仰する地蔵さんの名を唱えながら死のうと思ったげな。
 すると、一匹の鱶がじっと善右衛門を見て、まるで我が背に乗れちゅうようなそぶりじゃ。善右衛門は思わずその背にまたがったが、その背が滑って海に落ちそうになる。慌ててつかまったとたん、手に持っちょった小刀をぐさっと鱶の背に刺してしもた。引きぬこうとしたが、鱶は痛がったり怒ったふうもなかったので、善右衛門は「すまんこつ」とつぶやきながら、鱶につかまって無事に岸辺に着いた。そして鱶は海へ消えていった。
 次の朝、泊清寺へ向かった善右衛門はたまげた。お地蔵さんの背にきのう鱶に突きたてた小刀がそのまま打ちこまれちょったげな。善右衛門は「ありがたいこっちゃ」と泣いて喜んだげな。
http://www.kyosuiren.or.jp/html/page01411.html
ゲスト  投稿日時 2015/10/22 15:16
鱶地蔵(泊清寺)
沖家室島にある泊清寺、その別院に弘法大師空海の御真作と伝えられる地蔵菩薩が安座されています。地蔵菩薩は鱶地蔵といわれ次のような伝説が残っております。
鱶地蔵縁起
むかし、当島には「おつや」という娘がおりました。おつやは生来温厚にして誠実、常に深く菩薩を尊信しておりましたが、継母はおもしろくなく日増しにその思いは深くなっていきました。ついには磯遊びを理由に、千貝瀬に連れて行き置き去りにしてしまったのです。潮が満ち千貝瀬は海の中へ、もうだめだと思ったその時、地蔵菩薩が「ふか」の形で現れ無事に陸地へおつやを救い出したのです。
所在地:周防大島町沖家室(大畠駅よりバスで70分、下田乗り換え 普通車可)
http://www.town.suo-oshima.lg.jp/syoukoukankou/fukajizo.html
ゲスト  投稿日時 2015/10/21 19:33
本日、NHKのBSプレミアムにて放映の「日本縦断こころ旅」で
まさにこの「沖家室島」が出ていましたよ^^
とてものどかな島でしたが、この島へ渡る唯一の大きな橋の下は逆巻く瀬になっており
昔話を彷彿とさせる光景でした。
ふじた  投稿日時 2012/9/30 7:44 | 最終変更
引き続き、よろしくお願いします。
センガイ瀬の界隈は非常に潮流が速く、潮の干満差が激しい海域です。センガイ瀬灯標は満潮時に水没する岩山の上に建立されているようで、干潮時には、土台となる岩山が露出してくるものと思われます。よって、この土台の岩山こそが「海女さんがしがみつき、潮の満ち上がりによって水没した岩」と推測した次第です。
▼ウォッちず
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?b=334924&l=1322154

この界隈は沈み根が多く、潮流が速いため海難事故が多く、センガイ瀬灯標は航行に欠かせない標識と聞いています。灯標は、平成16年に船舶の衝突によって倒壊。仮設灯標も同年8月の台風波浪によって再び倒壊。後の平成17年に完全復旧して現在に至っています。倒壊前の写真、および遠景が何方かのブログにありましたので、こちらにお知らせします。
http://blogs.yahoo.co.jp/ujina40/6082298.html

なお現在の写真は、船上から撮影することしか出来ない沖(約5kmの沖合)ですので(^。^;、近隣の離島へ釣りへ行くとき、好機がありましたら撮影してみます。(長文失礼いたしました)
beniko  投稿日時 2012/9/29 20:17
場所を教えてもらってありがとうございました。
このサイトで使用しているgoogmeマップでは詳細不明瞭なので、お寺の位置がそもそも判別できませんでした。よって恐れ入りますが、指示通りの位置へ訂正する事が難しいです。※教えてもらった国土交通省の地図はきちんとお寺の位置がわかるようですね。
ちなみに、「海女さんがしがみついた岩山」というのはまだ浸食されずに残っているのでしょうか?それともどの岩山かは特に指定されていないのでしょうか?
それと、もしお地蔵さんの写真を撮影される時は、もしよければ千貝瀬の様子がわかる写真も欲しいと思っています。宜しくお願いします。
ふじたのぶお  投稿日時 2012/9/29 18:18
初めまして。沖家室島に数年間、毎週通っていた者です。
ふか地蔵さまは、本浦港の北の神社ではなく、南側の寺の横にある筈です。
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?longitude=132.36450262321&latitude=33.850724858894
さらに、海女さんがしがみついた岩山は、島の南側にあるセンガイ瀬(千貝瀬)と呼ばれる漁場で、現在でもセンガイ瀬灯標が建ち、運用されています。
あまりにもリアルなお話に感動してしまい、つい口を挟んでしまいました。大変お邪魔いたしました。m(__)m
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