昔2人の年老いた狩人が山でむじなを追っていた。むじなは狩人に追われてある岩山の洞窟に逃げ込んだ。そこは村の者が「地獄穴」と呼んで近付かない暗い不気味な洞窟だった。
しばらくするとむじなが穴から出て来た。するとそのむじなを追って一人の男が走ってきた。狩人は驚いたが、男は入り口から出てきた途端、何やらびっくりした様子で穴の奥へ戻っていった。2人の狩人はこんな洞窟に人が住んでいたのかと思い、洞窟の奥へ行ってみることにした。
どんどん洞窟の奥へ入るとやがて光が見え、2人はその光の方へ進んだ。 するとそこは大きな川が流れ、作物も良く実った大きな村があった。2人は驚いていたが、とりあえず村の人に声をかけてここは何と言う村か聞いてみた。ところが村の人は2人の狩人の姿が見えないのか、誰も2人に返事をしない。
そういうことならと2人はあちこち村中をのぞいて回っていたが、ある家をのぞいた時驚いた。なんとそこには去年死んだはずの隣のじいさんが座って酒を飲んでいたのだ。そのじいさんは酒を飲むとひたいをペチペチと叩いた。それは死んだ隣のじいさんがよくやっていたクセだったので、2人は死んだはずのじいさんに違い無いと思い声をかけた。
2人が大きな声で呼ぶと、突然辺りの犬がいっせいに吠え始めた。じいさんは「犬が吠えだしたぞ、何か災いがやって来た!皆の者、火を焚いて災いを追い出せ!」と叫んだ。 するとどの家からも煙りが上がり、狩人は煙たくて仕方ないので村を出ることにした。
すると突然誰かに後ろから引っ張られた。2人が振り返るとそこには村中の者がまるで「行くな」とでも言うように2人の着物を掴んで引っ張っているのだった。2人は急に恐ろしくなり、必死にふりほどくと急いで逃げ出し、この村に入ってきた時の洞窟へと走った。村人達も追っては来たが、洞窟の手前まで来ると追ってこなくなった。2人は急いで逃げ帰った。
その後、2人はあの洞窟の話をし、一人の狩人はまたあの村に行ってみたいと言ったが、もう一人の狩人は二度と行きたくないと言った。その後あの村にまた行きたいと言った狩人はすぐ死に、二度と行きたくないと言った狩人は長生きしたそうだ。あの「地獄穴」はあの世の入り口だったのだろうか。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 北海道の伝説(日本標準刊)より |
備考 | アイヌの民話 |
場所について | 突哨山(あの世のいりぐち、比布) |
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