昔、奈良県三輪の箸中村というところに、箸中長者という長者がいました。ここで作る酒は大変おいしく、造れば造るだけ売れて、毎日たくさんの小判が長者の家に集まりました。
長者の家では、金蔵もいっぱいになり、屋敷内にも小判があふれていました。長者は、余っているとはいえ小判を村人たちに分けるのは惜しいので、近くの川へ捨てて処理していました。
ある時、長者の娘が屋敷の中で針仕事をしていると、針をボリボリと食べる虫「金食い虫」を見つけました。虫を見た長者は「余った小判をこの虫に食べさせよう」と考え、屋敷内のすべての小判を虫に与えました。
そして長者自身もありったけの贅沢をしようと、食事に使ったお箸を「一回使えばすぐ捨てる」という事を始めました。一口食べるごとに新しいお箸を使うものだから、屋敷の外に捨てられた箸が山のように積みあがりました。
やがて金食い虫が、屋敷内の小判をすべて食べ終わりました。長者は不要な小判がなくなって喜びましたが、金食い虫はまだまだ小判が足りないのか、屋敷外の金蔵へ飛んで行きました。
長者が止めるのも聞かず、金食い虫はあっという間に金蔵の小判を食べつくしました。全ての小判を食べられてしまった長者は、やがて落ちぶれて死に絶えてしまいました。
今では、金食い虫のフンから生えたという一本の木と、捨てられた箸の山だけが残っていて、箸の山は「箸墓」と呼ばれているそうです。
(紅子 2013-9-26 23:50)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 奈良の伝説(日本標準刊)より |
場所について | 箸中(地図は適当) |
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