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くしがき仙人(くしがきせんにん)

放送回No.1077(0680-A)
放送日1988年12月17日(昭和63年12月17日)
出典岐阜の伝説(日本標準刊)より
クレジット演出:フクハラ・ヒロカズ 文芸:沖島勲 美術:門屋達郎 作画:フクハラ・ヒロカズ
ナレーション市原悦子

女房を亡くした男が、みんなに励まされてショックから立ち直る

昔、飛騨は高山の八軒町(はっけんちょう)に源蔵(げんぞう)という男が住んでいた。源蔵は大工であったが、最近、女房を亡くしてからというもの、ひどく落ち込み仕事も手につかない有様だった。

そんな源蔵を見かねた仕事仲間や近所の人たちが、源蔵を励まそうと、ある日源蔵を飲みに誘った。酒の席でも相変わらず気分の晴れない源蔵であったが、大工の棟梁が「仙人になれば雲に乗ってどこでも好きな所に行ける」と言ったのを聞いて、どうすれば仙人になれるのか東山の素玄寺(そうげんじ)の和尚さんに聞きに行くことにした。仙人になれば、雲に乗って天に上り、死んだ女房の所に行けると思ったからだ。

和尚が言うには、仙人になるには火にかけない物を食べ、深山幽谷に入り心を練るということだった。これを聞いた源蔵は、火にかけない物といえば串柿(くしがき)がいいだろうということで、次の日たくさんの串柿を背負って西南の松倉山に登った。

それからというもの、源蔵は来る日も来る日も岩の上に座って心を練った。そのうち持ってきた串柿も底をつき、源蔵の手足は木の枝のように痩せ細っていった。そんな霧の深いある日、眼下の雲を見た源蔵は、とうとう仙人になれたと思い込み雲の中に飛び込んだ。

しかしもちろん雲などに乗れるはずもなく、源蔵の体は真っ逆さまに麓の村に落ちていった。空から降って来た源蔵を見て驚いた村人は、まだ息のある源蔵を素玄寺に担ぎ込んで介抱した

「仙人になるなど、どだい無理な話。そんなことをしても死んだ女房は喜ばないだろう。」和尚は源蔵をこう諭し、源蔵は村人の介抱ですっかり体も良くなった。それから気持ちの整理もついた源蔵は、また以前のように元気に働くようになった。

こんな源蔵を、人々は“くしがき仙人”と呼んで励まし続けたそうだ。

(投稿者 やっさん 投稿日時 2012-4-15 14:18)


参考URL(1):http://hidasaihakken.hida-ch.com/e353977.html
地図:高山市桐生町1丁目293 喚応是誰(くしがき仙人)の墓所

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