No.1067
きっさくおとし
吉作落とし
高ヒット
放送回:0673-B  放送日:1988年10月29日(昭和63年10月29日)
演出:山田みちしろ  文芸:沖島勲  美術:水谷利春  作画:重国勇二
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崖の途中に取り残された、哀れな一人の男の話

ある山に、岩茸(いわたけ)を採って暮らしている「吉作」という若者がいた。独り暮らしの吉作は山の男らしく、身も心も清くたくましい立派な若者だった。

ある晴れた日、初めて入った傾山(かたむきやま)のある岸壁で岩茸を採っていた。岩茸はそそり立つ断崖絶壁の壁面に生えているため、綱一本に捕まりながら採るという大変な仕事だった。岩茸はたくさん採れ、ふと崖の途中に人が座れるくらいの小さな岩棚があるのに気が付いた。苦しい姿勢が続いていた吉作は、岩棚に降りてしばらく休憩する事にした。

岩棚に座って十分に休憩しそろそろ上にあがろうとすると、今までぶら下がっていた綱に手が届かない。吉作の体重を支え伸びきっていた綱は、吉作が手を放した際にずいぶん上の方まで上がってしまっていた。吉作は、岸壁の途中に一人で取り残されてしまった。

吉作は声を限りに何度も叫んだが、その声は岸壁にこだましまるで化け物の叫び声のようになった。何日か経ち、吉作は飢えと寒さのためほとんど意識を失いかけていた。おぼろげな意識の中で、「鳥のようにふんわりと飛んで着地できるかもしれない」と錯覚し、崖の岩棚から身を踊らせた。吉作は、美しい紅葉で赤く染まった谷間に消えていった。

後に、この事を知った村人達はあの岩場を「吉作落とし」と名付け、山に登る人々の戒めとしたという。

(紅子 2011-10-17 21:49)


ナレーション市原悦子
出典大分の伝説(日本標準刊)より
場所について吉作落としの場所:大分県傾山(大分県緒方町上畑)
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地図:吉作落としの場所:大分県傾山(大分県緒方町上畑)
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※掲載情報は 2011/10/17 21:49 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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トラウマ(笑  投稿日時 2014/11/25 12:19
この作品は私が唯一若干のトラウマ的感覚で脳にこびりつき、時折ふと思い出しては悲しくなり、時には感慨深くなる話です。

人生におきかえれるといいますか。

気を抜くと足元をすくわれる。と。

この話を見直す(ネットで検索してみる)きっかけになったのが、同時多発テロでした。

「極限の状態ではとても助からない高さでも、下を見ていたら「ふわっと宙に浮ける様に落ちて、死なないんじゃないか(鳥のように飛んで着地できるんじゃないか)」と錯覚するんです」と、あの事故でビルの外に身を投げた方の心理状態を分析した方が言っておられました。

とても切ないというか、苦しい作品だと思います。
metron  投稿日時 2013/7/7 3:03
大分県出身ですけど、大分の話って結構、怖い・悲しい系多いですね。。。


吉作落とし以下

子取り
瓜生島とえびすさま
海じじい
お初観音
お地蔵さんの首

子育て幽霊
ききょう物語

など。
マニアック  投稿日時 2011/10/24 21:30
なんという悲劇でしょうか。当時、見ていて「神様は何していたんだー?」と言いたくなりました。あとで知った村人たちは、どうやって知ったのでしょうか?
黒田  投稿日時 2011/7/26 2:55
出典:『大分の伝説』(大分県小学校教育研究会国語部会・編 日本標準 昭和53年10月・刊)所収「吉作落とし」

 内容は、ほぼ出典通り。ただし、吉作が身投げした岩棚を「吉作落とし」と呼ぶようになった事には触れられていない【出典】。
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