放送回 | No.1050(0662-B) |
放送日 | 1988年08月13日(昭和63年08月13日) |
出典 | 土屋北彦(未来社刊)より |
クレジット | 演出:芝山努 文芸:沖島勲 美術:亀谷三良 作画:山崎隆 |
ナレーション | 常田富士男 |
昔、大分県の宇佐のある村に作兵衛とおタツという夫婦が住んでおりました。
この夫婦には、2歳になる男の子がおりましたが、作兵衛はいつも働かず遊んでばかりいるので、子どもの着物も買えず、食べるものにも困るような状態でした。
作兵衛は、いつも実家の父親に金を無心しておりました。ある日、とうとう父親から叱られた作兵衛は、今度こそは真面目に働こうと鍬を借り、借りたお金も子どもの着物を買ってやろうと実家を出ました。しかし、悪友達に再び博打に誘われて、作兵衛は誘惑に負けてまた遊んでしまうのでした。
その頃、家ではおタツが、ずっと泣き続ける子どもに苛立っていました。おタツは「そんなに泣いていると子取りに取らせるぞ!」と子どもを脅かしました。しかし、何も食べていない子どもは泣き続けるばかり。おタツはだんだん泣き声にイライラしてきました。
おタツはとうとう「ほら!すぐそこに子取りが取りに来るぞ!」と怒鳴った瞬間、家の奥から巨大な毛むくじゃらの手が出て来てきました。巨大な手は子どもを掴もうとしましたが、間一髪おタツが子どもを抱き寄せて、作っていた餅を投げつけました。巨大な手は、餅を掴んでまた闇の中に消えていきました。
恐怖でへたりこんだおタツはそのまま気を失ってしまいました。作兵衛が帰ってきて倒れたおタツを介抱すると、おタツは今みた一部始終を話しました。
その話を聞いた作兵衛は、自分が不甲斐なさを深く反省し、それからはぷっつりと博打からも手をひいて、真面目に働くようになりました。そして、おタツもはいくら貧乏で気が立っていても、子取りがくるなどと嘘をつくのはやめようと深く心に誓ったそうです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-8-31 0:34)