昔、あるところに夫婦そろってのんき者で眠り好きな、お爺さんとお婆さんが住んでいた。
ふたりは若いころは村でも評判の働き者だったが、年取ってからは一日中、所構わず眠ってばかり過ごすようになり、村人たちは呆れるばかりだった。
ある日のこと、村人たちが家の前を通ると、珍しくお爺さんとお婆さんが起きていた。村人たちが「どこか具合が悪いのか」と聞くと、ふたりは「釜戸や家財道具がなくなっていて、手元に残っているのは布団と着物などを入れる大箱だけ」と、眠気交じりに話した。
村人のひとりが「泥棒が盗みに入ったのでは?」と心配そうに話したが、ふたりは驚くこともなく、またのんきに眠ってしまうのだった。
夜になって、ふたりが布団を敷こうとしたが、今度は布団がなくなっていた。あちこち探し回っても布団は見つからず、仕方なく大箱の中に入って眠ることにした。
ふたりが眠りについたのを見計らって、家に泥棒が入ってきた。大箱の中にふたりが眠っていることは知らず、大箱を背負って山の方へ走って行った。
しばらくすると大箱の中からふたりの会話が聞こえて来たので、泥棒は大箱に化け物が入っていると勘違いし、大箱を放り投げてどこかへ逃げてしまった。
放り投げた際、大箱の蓋が開いたのだが、中のふたりが目を覚まし、上を見上げると星空が見えたので屋根が盗まれたと勘違いした。
何も知らないふたりは慌てることもなく「流石に家ごと盗むことは出来なかったのだろうし、屋根の無い家を盗む泥棒はいないだろう。泥棒の心配もなくなったし、朝まで時間があるからまた寝ようか」と、のんきに言って山の中で眠ってしまうのだった。
(投稿者: Kotono Rena 投稿日時 2013-9-8 20:48)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 水澤謙一(未来社刊)より |
出典詳細 | とんと昔があつたげど 第二集(日本の昔話02),水沢謙一,未来社,1958年5月15日,原題「眠り好きの爺さと婆さ」,採録地「小千谷市首沢」,話者「川上イマ」 |
場所について | 小千谷市首沢(現在の小千谷市南荷頃の首沢地区、地図は適当) |
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