No.1039
かわたのなまずがみ
川田の鯰神

放送回:0655-B  放送日:1988年06月25日(昭和63年06月25日)
演出:芝山努  文芸:沖島勲  美術:亀谷三良  作画:後藤真砂子
徳島県 ) 9430hit
一杯の粟飯を惜しんだ女房に大鯰が祟る話

昔、徳島県は麻植郡(おえぐん)川田(かわた)の季邦(すえくに)という所に貧しいが働き者の夫婦がおり、二人は毎日食べるのにやっとの稼ぎだが別に不満もなく仲良く暮らしていた。

ある日、夫婦が朝飯を食べ終え畑に出かけようとすると粟飯が茶碗一杯分余ってしまった。女房が食べて片付けてしまうよう亭主に勧めるが、亭主は既に満腹だから夜まで残しておけばいいと言うので女房は粟飯を棚に置き、その日二人はいつものように畑に出かけ野良仕事に精を出した。

ところが夕暮れ時になり家に帰ってみると、棚の粟飯が茶碗を残し無くなっている。亭主が食べたのではないのかと女房は聞いてみるが、亭主は全く身に覚えがなく粟飯一杯の盗み食いぐらい気にする事はないと言う。女房も大して気に留めずその晩は笑って過ごしたものの、あくる日もまた一杯の粟飯が残り、それを棚の上に置くと畑から帰ってきた時には無くなっているのであった。流石に女房も不振に思い隣の婆さまの家を訪ねてみた所、婆さまは怪しい者は見かけなかったが「沼のナマズが跳ねた」と言う。

しかし女房はその言葉を真に受けず苛立ちながら家に帰ると、そんなに気になるのなら次は残らないように炊けばいいと亭主に諭されたので、次の日女房は言われた通りにいつもより少なめに炊いたが、やはり粟飯は一杯分残るのであの粟飯は神様にお供えする分だと亭主は割り切るようになった。それでも納得のいかない女房は日に日に炊く量を減らしてみるが、何故か決まって一杯の粟飯が残り仕事から帰ると綺麗に無くなるという事が続いた。ところでその年は村が凶作で作物があまりできなかったのだが、どういうわけか夫婦の田畑だけはいつもの年と変わらず実っていたのであった。

ある時、女房は粟飯の盗人を捕まえるため亭主を先に畑へ行かせ、竈の灰をかき出し土間中に敷き詰めて足跡から居場所を突き止めようとした。女房の思惑通り、二人が仕事から帰ってくると土間を何かが這いずり回った跡があり、それは隣の婆さまの家へ続いていた。前々から婆さまが怪しいと思っていた女房は、亭主が止めるのも聞かず急いで灰の跡をつけてみると、なんと婆さまの家の前で大鯰が体中灰に塗れてうずくまっていた。大鯰は怨めしそうに女房を見つめると、もがきながら側の沼の中へ飛び込んでいった。騒ぎを聞き付けた婆さまが女房から大鯰を懲らしめた事を聞くと、大鯰はこの沼の主であり、体のぬめりが無くなると死んでしまうので祟られても知らぬと婆さまは怯えて家に隠れてしまう。

そしてこの時から、夫婦の家では粟飯を炊いても腹が膨れる前には無くなってしまうので、炊く量を段々増やす内についに粟が底を突いてしまった。その上悪い事に女房が病の床に就いてしまい、亭主の看病の甲斐も無く女房は日増しに衰弱する一方であったが、ある夜、危篤のはずの女房が突然起き上がり自分はこの家の脇の沼に住む大鯰だと言い始める。大鯰は今まで一杯の粟飯の礼にこの家に救いを与えてやっていたが、女房から受けた仕打ちの仕返しとして女房に祟って取り殺してやると言うので、亭主は、決して悪気があってやったわけではないのでどうか女房を許してやって欲しいと懸命に願い出た。

亭主の願いが通じたのか、大鯰は女房に取り憑くのを止め女房はその場に倒れこんでしまう。やがて女房は意識を取り戻し、不思議と病も良くなっていった。その後二人は沼のほとりに祠を建てて大鯰を祀り、毎朝必ず残る一杯の粟飯を祠の前に置いたという。

(投稿者: お伽切草 投稿日時 2012-1-10 23:59 )


参考URL(1)
http://koutsu-walk.com/view.html
ナレーション市原悦子
出典阿波の伝説(角川書店刊)より
出典詳細阿波の伝説(日本の伝説16),守川慎一郎,角川書店,1977年3年10日,原題「川田の鯰神」
場所について季邦のなまず神社(地図は適当)
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地図:季邦のなまず神社(地図は適当)
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※掲載情報は 2012/1/11 1:14 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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beniko  投稿日時 2012/1/11 13:04 | 最終変更
お伽切草さん、お返事ありがとうございます。書いた後から、やっぱり怒るんだろうかと気になっておりました。すいません細かい事ごちゃごちゃと申しまして、、ご理解ご協力いただけて感謝いたします。

私も細かく書いちゃいたい、という気持ちがあります。もちろんファンであれば好きであれば多くの方でそう思うハズ。でも昔話をきちんと解説するということは、全文表示になってしまうし、そうなると物語サイト(例えば福娘サイトのように)になると思います。私しては昔話の物語サイト(絵本のオンライン版のような)ではなく、あらすじサイトでありたいと思っています。

どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
お伽切草  投稿日時 2012/1/11 12:08
beniko様へ
承知いたしました。
何事も詳細に記したい性分のため、また誰もが実際の動画を見れる環境に必ずしもあるとは限らないと考えどうしてもネタバレ同然な文になりがちでしたが、
自分でも薄々規約に引っかかるかもなとは思っていましたので、これからはもっとコンパクトに纏めてみようと思います。
araya  投稿日時 2012/1/11 9:24
今日、図書館に別件で行きますので、『阿波の伝説』(角川書店)も確認してきましょう。あの本は前半が伝説の名所旧跡を訪ねる構成になっていますので、そのナマズ神社もどこの神社か載っていると思います♪
beniko  投稿日時 2012/1/11 3:45 | 最終変更
季邦にあるらしい「なまず神社」をネット検索してみるも、場所の特定ができませんでした。よって地図は紅子の適当でマッピングしました。
beniko  投稿日時 2012/1/11 3:13
お伽切草さん、いつも貴重な時間をかけてあらすじを投稿いただきありがとうございます。定期的にいただくあらすじチョイスをいつも楽しみに拝見しております。

お礼を申し上げながら、少しだけ紅子からのお願いとして図々しくもお伝えしたいのですが、お話のストーリーをもう少しだけあと少しだけ粗くなりませんでしょうか。
あくまで私の考え方(というか感じ方というのかもしれません)ですが、このサイトにはあらすじとして記載したいと考えておりまして、全文に近いものは避けたいと考えております。
せっかく時間を割いて作ってもらっていると思いますが、よかったら詳細文章ではなくちょっと割愛されたあらすじ文章が希望です。

本来ですと直メールでお願いした方がよろしいのでしょうが連絡先を知りませんので、誠に恐縮ですが、お願いとして書き込みました。

ある程度の目安(決めごと)があった方がやりやすい、という事であれば、例えばですが800文字前後、という事では如何でしょうか?何も理由も根拠もありませんが、400字詰め原稿用紙2枚分、という分量を目安としてお願いしたく思います。
※もちろん800文字を超えたらダメとかいうルールではなく、あくまで目安として。

すいません。誤解していただきたくないのですが、こんな事を書くと気分を害される危険性もあるとはわかっております。しかしながら、これからの事もございますので、なにとぞご理解とご協力いただければ嬉しく思います。

今後とも一緒に全話網羅まで突き進んでいければいいなと思っています。どうぞこれからもよろしくお願いします。
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