昔、ある所に大根とにんじんとごぼうと種いもとこんにゃくが住んでおった。
この頃の大根は今と違って、薄い緑色をしておった。大根は体が大きくて力も強く、相撲を取ってもいつも勝つのは大根だった。そのため大根は「自分に怖いものは何もない」と言って、仲間の中で少しいばっていた。
ある寒い日のこと。あまりに冷えるので、種いもが「酒でもみんなで飲んで、あったまろう」と言い出した。みんなは大賛成した。
次に最初に言い出した種いもの他に、誰が一緒に行くのかをくじ引きで決めることになった。その結果、大根が種いもと一緒に酒を買いに行くことになった。
大根と種いもが町に向かって歩いていると、山から「吹きおろし」の冷たい風が吹いてきた。種いもが「おろしじゃ」というと、大根は自分がおろし金で大根おろしにされてしまうと勘違いし、大慌てで逃げ、近くの穴に隠れてしまった。
後から追いついてきた種いもに「おろしとは、山から吹いてくる冷たい風のことじゃ」と言われ、大根はほっとした。
大根はこの時に、よほどびっくりぎょうてんしたのであろう。それ以来、体が真っ白になってしまった。そしてそれからの大根はいばったりせずに、仲間たちにも優しくするようになったということじゃ。
(カケス 投稿日時 2014/5/24 19:47)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 石崎直義(未来社刊)より |
出典詳細 | 若狭・越前の民話 第二集(日本の民話73),杉原丈夫、石崎直義,未来社,1978年12月15日,原題「大根のびっくりぎょうてん」,採録地「小浜市」,原話「小浜市連合婦人会のふるさとの昔話」,再話「石崎直義」 |
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