昔貧乏な男が、年越しの金を稼ぎに街までわらじを売りに行くことにした。
一人で行くのは寂しいので、隣に住む男を誘って行こうと隣の家を訪ねた。すると隣の男は、夕べ妙な夢を見たという。それは男が夜寝ていると、財宝をたくさん積んだ宝船が家の前までやって来たが、入り口で止まって引き返してしまった、という夢だった。隣の男はこれがいい夢か悪い夢か考えていたのだという。
それを聞いた男は「それはいい夢に違い無い、自分に譲ってほしい」と頼んだ。隣の男は驚いたが、タダでは嫌だという。そこで男はなけなしの金と交換に、その夢を売ってもらった。
そしてその夜、男が眠りにつくと、シャンシャンという音が聞こえてきて、財宝を積んだ宝船が近付いてきた。男は、船が家の中に入ってくるよう祈ったが、宝船はくるりと向きを変えて去ってしまった。
翌日、この事を隣の男に話すと、家の入り口が狭くて船も入ってこれないのじゃないかと言った。そこで男はその夜、家の戸をはずし壁を壊して宝船を待った。身を切るような寒さの中眠りにつくと、またあの宝船がやって来た。男は今度こそはと船が家の中に入ってくるよう祈った。
すると船は願い通り男の家の中に入ってきて、たくさんの財宝を与えていった。その次の年から、男はやる事なす事すべて上手くいき、大変な大金持ちになったそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 鹿児島県 |
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